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2021 年度 実施状況報告書

ALSの分子病態解明と治療法開発を目指した直鎖ユビキチンの新規特性解析

研究課題

研究課題/領域番号 21K06857
研究機関川崎医科大学

研究代表者

寺脇 正剛  川崎医科大学, 医学部, 講師 (60437217)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード神経変性疾患 / 神経炎症 / ユビキチン / プロテイノパチー
研究実績の概要

遺伝性筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンが侵される致死的な神経変性疾患であるが、いまだに有効な治療法が確立されていない。多くのALSの症例において神経細胞の細胞質にユビキチン陽性の凝集体が認められ、その主要な基質タンパクとしてTDP-43が同定されている。われわれはこれまでに、ALS患者の病理組織において神経細胞内凝集体に直鎖ユビキチンが含まれていること、直鎖ユビキチンを形成する唯一のE3リガーゼであるLUBACの阻害剤によりin vitroにおけるTDP-43凝集体形成が減弱していることなどを見出してきた。本年度の研究においてはTDP-43のALS関連変異体における直鎖ユビキチン化と凝集体形成との相関について明らかにすることを目的として、生化学的解析を中心に行った。これまでに報告されているALS関連変異のうちA315T、G298S、M337V、Q343Rの各変異を導入したヒトTDP-43の発現ベクターを構築し、マウス神経芽細胞株であるNeruo2A細胞に導入して、 凝集体の形成を免疫蛍光染色により評価した。その結果、全長型のTDP-43はおもに核内に局在し、ユビキチン陰性で目立った凝集体形成は認められなかった一方、カルパインやカスパーゼにより部分切断されて生じるとされている切断型TDP-43では顕著な細胞内凝集体が形成され、それらは直鎖ユビキチン陽性であった。さらに核移行シグナルを破壊したTDP-43は全長でも細胞内に局在して直鎖ユビキチン陽性の凝集体を形成することが明らかとなった。これらの事はTDP-43の切断による核移行シグナルの喪失がC末端側の細胞質局在と凝集体形成の起因となっていることを示唆している。今後はLUBACの活性中心であるHOIPのKO細胞を作製し、凝集体形成における直鎖ユビキチンの寄与と神経炎症との相関について研究を進めていく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

培養細胞を用いたTDP-43の発現による生化学的解析、蛍光イメージングによる細胞生物学的解析は予想通りの結果が得られている。CRISPR/Cas9システムによるHOIP欠損細胞株の作製も済んでおり、細胞レベルでのTDP-43凝集形成における直鎖ユビキチンの直接的な寄与について検討する評価ツールとして用いる。一方動物実験についてはALSモデルマウスである変異型ヒトTDP-43のトランスジェニックマウスをJackson Laboratoryから導入を済ませ、飼育およびスクリーニング条件、さらにALS様症状を生存率、運動テスト、中枢神経系の組織染色などで評価する系を確立し、解析準備が整った状態にある。

今後の研究の推進方策

引き続きNeuro2A細胞、および今回作製したHOIP欠損Neuro2A細胞を用い、TDP-43の凝集体形成に対する直鎖ユビキチンの寄与について、蛍光イメージング、および生化学的手法により評価を進める。また直鎖ユビキチンが付加されたTDP-43の細胞内凝集体が形成されることから、凝集体の形成およびALS関連変異が神経細胞におけるNF-kBシグナルの活性化に与える影響についてレポーターアッセイ、およびリアルタイムPCR法により検討する。一方、ALSモデルマウスを用いた実験ではALS症状の評価系が確立されたので、次年度は小スケールでLUBAC阻害剤の投与による治療実験を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

年度内に大阪市立大学(現・大阪公立大学)から川崎医科大学に異動となったため、異動にかかる期間などにおける消耗品の利用計画に一部変更が生じた。繰越額は次年度(2022年度)に予定通りの消耗品購入費用として使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] RUFY4 exists as two translationally regulated isoforms, that localize to the mitochondrion in activated macrophages2021

    • 著者名/発表者名
      Vale?ka Jan、Camosseto Voahirana、McEwan David G.、Terawaki Seigo、Liu Zhuangzhuang、Strock Eva、Almeida Catarina R.、Su Bing、Dikic Ivan、Liang Yinming、Gatti Evelina、Pierre Philippe
    • 雑誌名

      Royal Society Open Science

      巻: 8 ページ: 202333~202333

    • DOI

      10.1098/rsos.202333

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Crosstalk Between NDP52 and LUBAC in Innate Immune Responses, Cell Death, and Xenophagy2021

    • 著者名/発表者名
      Miyashita Hirohisa、Oikawa Daisuke、Terawaki Seigo、Kabata Daijiro、Shintani Ayumi、Tokunaga Fuminori
    • 雑誌名

      Frontiers in Immunology

      巻: 12 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fimmu.2021.635475

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Th2 cell-derived histamine is involved in nasal Th2 infiltration in mice2021

    • 著者名/発表者名
      Iwasaki Naruhito、Terawaki Seigo、Shimizu Kouhei、Oikawa Daisuke、Sakamoto Hirokazu、Sunami Kishiko、Tokunaga Fuminori
    • 雑誌名

      Inflammation Research

      巻: 70 ページ: 539~541

    • DOI

      10.1007/s00011-021-01458-x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Th2 cells and macrophages cooperatively induce allergic inflammation through histamine signaling2021

    • 著者名/発表者名
      Iwasaki Naruhito、Terawaki Seigo、Shimizu Kouhei、Oikawa Daisuke、Sakamoto Hirokazu、Sunami Kishiko、Tokunaga Fuminori
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 16 ページ: -

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0248158

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] HOIPIN-8, a chemical inhibitor for linear ubiquitination, suppresses ALS-related TDP-43 aggregation and inflammatory responses in neuronal cells2021

    • 著者名/発表者名
      Qiang Zhang, Seigo Terawaki, and Fuminori Tokunaga
    • 学会等名
      第15回 日本臨床ストレス応答学会大会
  • [学会発表] LUBAC ubiquitin ligase complex and linear ubiquitination facilitate cytoplasmic aggregation of amyotrophic lateral sclerosis (ALS)-associated TDP-432021

    • 著者名/発表者名
      Seigo Terawaki, Qiang Zhang, Daisuke Oikawa, Bangzhong Lin, Kazuto Nunomura, Shinsuke Komagawa, Yoshinosuke Usuki, Fuminori Tokunaga
    • 学会等名
      第44回 日本分子生物学会年会

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公開日: 2022-12-28  

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