研究課題/領域番号 |
21K06862
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
梅田 香織 日本大学, 医学部, 助教 (10445744)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | liver X receptor / 肝臓 / Kupffer細胞 / 核内受容体 / 炎症 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、研究代表者が先行研究において発見した、核内受容体liver X receptor (LXR) 欠損マウスの肝臓においてKupffer細胞、骨髄由来マクロファージ及びナチュラルキラーT (natural killer, NKT) 細胞などの免疫細胞組成及び活性が変化し、炎症反応の増悪や抗腫瘍活性の障害を誘導する、という新たな知見をさらに発展させ、LXRによる免疫細胞間相互作用の調節メカニズム、そして非アルコール性脂肪肝炎の進展に対する影響を明らかにすることを目的とする。本年度はLXR欠損マウスを用いて以下の検討を行った。 1、肝障害マウスの構築に着手する前に、通常状態のマウスの肝臓の動態を遺伝子発現レベルで把握するため、野生型及びLXRα/β欠損マウスの肝臓より単離した単核球におけるマイクロアレイ解析のデータを詳細に解析した。その結果、これまでの報告通り、肝常在Kupffer細胞特異的遺伝子群が顕著に減少すること、一方代償的に骨髄由来の誘導マクロファージ群のマーカー遺伝子群の増加が認められた。興味深いことに、これまで報告されていなかったある種のリンパ球のマーカー遺伝子群の顕著な増加が認められ、LXRが影響する新規の細胞群を見出すことができた。 2、LXRα欠損マウスに西洋食を摂餌させると早期に非アルコール性脂肪肝炎を誘導するが (Endo-Umeda et al., Endocrinology, 2018)、上記1の検討により発見したリンパ球関連の遺伝子群の発現について、野生型及びLXRα欠損マウスの西洋食負荷マウスの検体を用いて評価した。その結果、LXRα欠損において肝炎の進行とともに顕著な増加を認めた。 以上の結果より、LXR欠損によってKupffer細胞、マクロファージ、NKT細胞のみならずある種のリンパ球系にも変化が生じ、肝炎の進展に影響することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究により、LXRが影響する肝臓免疫細胞としてKupffer細胞、マクロファージ及びNKT細胞が同定されたことから、これらの細胞をLXRの標的細胞として肝障害に対する影響を検証する予定であった。しかし、無刺激の生理的条件下のマウスの検体を用いたマイクロアレイ解析の結果から、LXRα/β欠損においてこれまで知られていなかった細胞群の表現型の変化を示唆する新たな知見を得ることができた。以上の結果は、LXRは肝臓の免疫系全体に多大な影響を及ぼす重要な転写因子であることを示している。野生型とLXRα欠損を用いた西洋食負荷実験においても、LXRα欠損においてその細胞群の顕著な増加が示唆されたことから、新たに見出したLXR標的細胞の非アルコール性脂肪肝炎の病態との関連性を裏付ける重要な知見を得ることができた。 さらに、先行研究において見出した、LXR欠損マウスにおいて胸腺における分化・成熟化異常によりNKT細胞が顕著に減少し、肝臓の抗腫瘍活性が減弱するという新たな知見をScientific Reports誌に掲載した。 以上、当該年度は今後の推進方策を発展できる新たな知見が得られたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、LXRα/β欠損マウスを用いて明らかにした知見は、様々な免疫細胞の混在した肝臓単核球における遺伝子発現レベルの変化であるため、タンパク質レベルでの発現変化や細胞分布を検討する必要がある。そこで、今後はマルチカラーフローサイトメーターを用いて細胞表面マーカーの発現を詳細に解析する予定である。また、LXR欠損マウスにおいて変化の認められた細胞群 (Kupffer細胞、マクロファージ、NKT細胞など) の肝障害の病態に対する効果を検証するために、骨髄移植のためのCD45.1系統のLXR欠損マウスやCre-LoxP系を用いた細胞選択的LXR欠損マウスの作製を現在進めている。全身性LXR欠損マウスの表現型の解析が終了し、準備が整い次第これらのマウスを用いた実験を開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は肝障害マウスの解析を実施する前に、通常状態のマウスのマイクロアレイ解析を行い、新規知見が得られたことから、リアルタイムPCRを用いた遺伝子発現解析など、データの再現性を評価するために時間を要した。そのため、本年度使用予定であった肝障害を惹起するための試薬や肝障害の評価に用いる試薬分を次年度に繰り越した。次年度は、急性肝障害を惹起するためのリポ多糖やコンカナバリンA、食餌誘導性の非アルコール性脂肪肝炎モデルの解析に用いる特殊飼料の購入を予定している。
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