研究課題/領域番号 |
21K06862
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
梅田 香織 日本大学, 医学部, 助教 (10445744)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝臓 / 核内受容体 / 肝臓X受容体 / 炎症 / Kupffer細胞 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
本研究課題では、研究代表者が先行研究において見出した、核内受容体liver X receptor (LXR)αとLXRβの欠損マウスの肝臓においてKupffer細胞やマクロファージ、ナチュラルキラーT細胞などの免疫細胞の分布や機能が変化すること、欠損マウスにおいて早期に脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎を誘導する、という知見のメカニズムをより詳細に明らかにするために、本年度は以下の検討を行った。 1、野生型及びLXRα/β欠損マウスに西洋食を負荷し、脂肪肝のモデルを構築した。食餌中のコレステロール含有量を従来の1.25%から0.2%とし、コレステロールによる毒性を抑えたことにより、欠損マウスの血中トランスアミナーゼ値の増加は認めなかったが、肝臓への単球の流入やマクロファージの増加、炎症マーカー遺伝子の発現増加などが観察され、軽度の炎症を誘導することが明らかとなった。 2、欠損マウスの肝臓における食餌誘導性炎症誘導メカニズムを探索するため、肝臓より単離した非実質細胞を用いて多検体のバルクのRNA-seq解析を行った。その結果、昨年度解析したマイクロアレイ解析の結果と一致し、欠損マウスにおいてKupffer細胞マーカーの顕著な減少や炎症マーカー群の有意な増加が観察された。また、西洋食負荷により、より多くの遺伝子発現変化を認めた。 3、上記2の結果では個々の細胞に関する情報が得られなかっため、第2期先進ゲノム支援を利用して肝臓免疫細胞のシングルセルRNA+ATAC-seq解析を行い、野生型とLXR欠損マウスの比較を行った。その結果、両群において細胞分布やオープンクロマチン領域に顕著な変化を認めた。現在引き続き解析を進めている。 以上の結果より、本年度のシングルセルレベルの解析により、LXRは肝臓免疫細胞の分布及び機能を生理的条件下及び病態時の両方において制御することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度の解析結果に基づき、本年度はLXR欠損マウスの肝臓において変化の観察された細胞において、マルチカラーフローサイトメトリーを用いた表面抗原の解析やセルソーターを用いて各免疫細胞を単離し、遺伝子発現解析等の詳細な検討を行う予定であった。その結果、LXRが作用する細胞の同定及びこれらの細胞群の脂肪肝や炎症への関与をある程度絞り込むことができた。さらに、当初の予定に加えて先進ゲノム支援に採択されシングルセル解析を実施した結果、令和4年度の到達目標であったLXRが関与する肝臓免疫系全体像を把握することができた。現在、バイオインフォマティクス解析を継続しており、来年度中にはLXRが制御する細胞及び遺伝子発現、エピゲノム制御等、より詳細な情報を得ることが期待できる。 以上、本年度得られた結果より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の解析から、明らかとなったLXR欠損による変化は主にバルクのRNA-seqやシングルセル解析により得られた遺伝子発現レベルの知見である。これらの結果について、来年度はタンパク質レベルで確認を行うために、単離した細胞を用いたウェスタンブロッティングや肝臓の組織切片を用いた免疫染色を行う。また、LXRが制御する脂肪肝、炎症誘導に関与する細胞の重要性を検証するため、中和抗体や薬剤を用いた細胞の選択的除去を行い、西洋食負荷の実験を行う。さらに、細胞選択的LXR欠損マウスを用いた検証についても開始する予定である。
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