本研究課題の目的である「LXRによる免疫細胞間相互作用の調節メカニズム及び非アルコール性脂肪肝炎の進展に対する影響を明らかにする」ことを達成するために、最終年度である本年度はシングルセルマルチオーム解析(RNA+ATAC-seq解析)の発展的解析、及びCre-LoxP系を用いた複数の細胞選択的LXRα/β欠損マウスを用いた食餌誘導性非アルコール性脂肪肝炎モデルの解析を行い、以下の結果を得た。 1、野生型または全身性LXRα/β欠損マウスの通常食及び西洋食負荷の4群の肝臓免疫細胞のマルチオーム解析について、昨年度はRNA-seq解析及びATAC-seq解析を個々に解析したが、単一細胞中での遺伝子発現情報とオープンクロマチン領域の情報を同時に得ることが困難であった。そこで、本年度は4検体分の両解析データをweighted nearest neighbor解析を用いることによって統合した。その結果、個々の解析でクラスタリングされた各細胞群における遺伝子発現及びオープンクロマチン領域のパターンは必ずしも一致しないことが明らかとなった。特に、LXRα/β欠損群において野生型群には存在しない遺伝子発現及びオープンクロマチン領域パターンを有する細胞群が出現することを見出した。 2、作製した細胞選択的LXRα/β欠損マウス及びコントロールマウスに西洋食を12週間負荷させ非アルコール性脂肪肝炎モデルの解析を行った。その結果、ある種の細胞選択的LXRα/β欠損群において、通常食においても免疫細胞組成が異なること、そして、西洋食負荷によりさらなる変化を認めることを見出した。 本年度の解析により、LXRの作用標的となる細胞をある程度絞り込むことができた。また、マルチオーム解析によりLXRα/β欠損マウスの肝臓免疫細胞のより詳細な情報を得ることに成功した。
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