研究課題/領域番号 |
21K06868
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山条 秀樹 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (50391967)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マクロファージ / Fas / TAK1 / Gasdermin family / RIPK1 / 炎症性細胞死 / 自己炎症性疾患 |
研究実績の概要 |
研究代表者はこれまでの研究から、マクロファージに潜む新規炎症性細胞死機構と、それを負に制御するシグナル伝達分子TAK1の役割について明らかにしてきた。この研究領域を深化させるべく、まず今年度はTNFRスーパーファミリーの中でもDeath receptorファミリーとして知られるFas受容体とその細胞内シグナル伝達に着目し、新規炎症性細胞死機構とTAK1との関連性について、主に細胞生物学的、生化学的及び免疫学的方法を中心に解析を行なった。まず強力な細胞死誘導能を有する可溶型FasLを用いてマウス骨髄由来マクロファージを処置したところ、マクロファージは細胞死を示したものの、それには他細胞と較べて高濃度のFasLを必要とした。次に細胞内シグナル伝達経路について解析を行ったところ、細胞死に必須のCaspase-8/3の活性化のみならず炎症性細胞死に必須の実行因子であるGasdermin family (GSDMD 及び GSDME)のCaspase依存的な分解を認めた。興味深いことに、TAK1欠損マクロファージは対照マクロファージと較べて低濃度のFasLに応答し細胞死に高い感受性を示すことを見出した。さらにこの表現型がシグナル伝達分子RIPK1の過剰活性化によることを明らかにした。これらの表現型と関連して、マクロファージ特異的TAK1欠損マウス(TAK1dMマウス)では主に腹腔や肝臓において自然炎症による組織傷害を発症し、不活化型RIPK1(RIPK1 D138N)を発現するTAK1dMマウスの樹立により、この傷害が劇的に緩和することを見出した。以上の結果から、マクロファージにおいてFasによる細胞死はTAK1により厳密に制御されること、この機構が破綻すると炎症性細胞死に伴う自己炎症様の疾患発症に繋がることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究経過から、解析を行う上での実験系が既に確立されていたこと、また研究を順調に進める上で必要なもの(試薬、実験動物、実験器具など)が滞ることなく揃っていたことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行った研究については、本研究課題のテーマである「TNFシグナルが司るマクロファージの運命決定の制御機構」の一端を解明したこともあり、現在国際的に知られる学術専門誌に投稿中である。今後については、本研究課題のもう一つのテーマである「炎症時のマクロファージ分化成熟を規定する分子基盤」の解明に向けて、申請時の研究計画に則って研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿及び追加実験のためにかかる費用として考えていたが、投稿が次年度にずれ込んだ。当初の予定通り、次年度において論文投稿及び追加実験にかかる費用として使用予定である。
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