研究課題/領域番号 |
21K06869
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
土本 大介 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70363348)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | EIEE35 / イノシン三リン酸 / ITPA / てんかん / 脱分極 |
研究実績の概要 |
イノシン三リン酸(ITP)分解酵素(ITPA)欠損による早期乳児てんかん性脳症35(EIEE35)のモデルマウスで見出した神経細胞の静止膜電位脱分極の分子メカニズム解明とEIEE35治療薬探索系構築を目的として以下の実験を行った。マウス神経芽細胞腫由来株化細胞Neuro2aをモデル細胞とし、CRISPR/Cas9法によりITPA欠損クローン(Itpa-KO)を樹立した。この株にTet-On発現ベクターを用いたヒトITPA遺伝子発現プラスミドを導入し、ドキシサイクリン依存的なヒトITPA発現細胞系を樹立した(Itpa-KO, ITPA-TetOn)。さらにこの株を用いて弱いITP分解活性と強いイノシン二リン酸(IDP)分解活性を持つNudt16の遺伝子部分欠損株(Itpa-KO, ITPA-TetOn, Nudt16部分KO)を樹立した。この株を用いた実験系において、ドキシサイクリン添加培養条件下と比べて、ドキシサイクリンフリーの培養条件下ではITPAの発現をほとんど認めなかったことから薬剤による同一細胞におけるITPA発現ON/OFFシステムが構築できた。 また、ITP排除へのNUDT16の寄与をマウスレベルで調べるため、EIEE35モデルである神経幹細胞特異的Itpa-cKOマウスにNudt16-KOマウスやヒトNUDT16-Tgマウスを掛け合わせる交配を開始した。最終的にはItpa-cKO/Nudt16-KOマウスやItpa-cKO/ヒトNUDT16-Tgマウスを樹立し、Itpa-cKOマウスの寿命(3週間)やけいれん発作と比較する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ITPA欠損による静止膜電位脱分極の分子メカニズム解明と治療薬探索のためのモデル細胞の樹立は順調に進んでいる。もう一つの目的のためのITPA部分発現抑制系の樹立は遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
樹立したモデル細胞を用いてITPA欠損時の静止膜電位脱分極を証明し、続いて各種イオンチャネル機能をITPA発現有り/無しの条件で比較して脱分極分子メカニズム解明を中心に進めたい。さらにEIEE35治療のための薬剤スクリーニング系を樹立する。一方、日本人に多いITPA遺伝子多型を念頭に置いたITPA部分欠損モデルマウスの樹立のための部分的な発現抑制系構築も令和4年度には進めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属研究室の教授の退職に伴う研究室物品片付けに予想より時間を取られて一部の実験ができなかったのと、使用した培養細胞用牛胎児血清について本来新規に購入予定であったが、凍結保存していた使用期限切れ牛胎児血清を試しに用いたところ予想外に良い結果が得られたので新規購入の必要が無くなったことが原因。次年度使用額については教授退職に伴い使用できないことが新たに判明した物品や試薬の購入費用に充て、翌年度分として請求した助成金については元々予定していた実験で購入予定だった新規の物品や試薬類の購入費用に充てる。。
|