C57BL/6マウスにコリン欠乏高脂肪食(CDA-HFD)を投与し、代謝障害関連脂肪肝炎(MASH)を誘導した。MASH誘導マウスの骨髄単球、末梢血単球、肝臓単球と肝臓マクロファージにおける遺伝子発現をRNAシークエンス解析し、肝臓に浸潤後の単球で最も発現の亢進する転写因子Egr2を同定した。単球・マクロファージでEgr2を欠損したマウス(Egr2-cKOマウス)を作製し、そのマウスにおける単球由来マクロファージの分化や線維化の進展を解析することで、MASHの病態形成におけるEgr2の役割を評価した。MASH誘導Egr2-cKOマウスにおける単球や、単球由来マクロファージの割合はMASH誘導野生型マウスと同程度だった。しかし、Egr2-cKOマウスでは、MASHの肝線維量が有意に減少した。続いて、肝臓における単球とマクロファージの変化を一細胞RNAシークエンスで詳細に解析した。Egr2-cKOマウスではLy6CとF4/80で定義される単球由来マクロファージの割合は、野生型と同程度だったが、単球から線維化マクロファージ(hLAM)への分化が抑制され、hLAMとも常在マクロファージとも異なるマクロファージサブセット(moKC)へと分化が偏向していることが分かった。これら一連の結果は、Egr2が肝臓に浸潤した単球からhLAMへの分化を促進し、それが肝線維症を進展させることを意味する。 続けて、肝臓に浸潤した単球にEgr2発現を誘導する環境要因を探索した。骨髄誘導マクロファージを長鎖飽和脂肪酸(パルミチン酸など)存在下で培養すると、Egr2レベルが亢進すること、反対に長鎖一価不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸(オレイン酸など)によるEgr2亢進を抑制することを見出した。最後に、オレイン酸の経口投与が、MASHに伴う肝線維症を改善することを生体レベルで証明した。
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