研究課題/領域番号 |
21K06878
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
小林 恒雄 星薬科大学, 薬学部, 教授 (90339523)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血管障害 / 糖尿病 / 血小板 |
研究実績の概要 |
ストレプトゾトシン誘発糖尿病マウスにおいて、胸部大動脈の内皮依存性弛緩反応、NO 合成酵素(eNOS)、NOxの減弱、血管収縮の増加が認められた。更に血液中の血小板由来 MP 数は、糖尿病時において増加が観察され、この MP をマウス胸部大動脈に直接処置を行ったところ、糖尿病群から採取した MP のみ内皮依存性弛緩反応の減弱、血管収縮の増加が観察された。MP中のタンパク質のスクリーニングを行ったところ、多数のタンパク分子の存在と、加えて糖尿病 MP はERK1/2 、eNOSを多く含有していた。ERK1/2 阻害剤である PD98059 (PD) をin vivo 処置した糖尿病動物は、MP 中のERK 活性を低下し、eNOS発現の改善が認められ、糖尿病時の血管機能異常を改善した。また、糖尿病血管において、細胞間接着因子(ICAM)-1 発現の増加が認められ、血管とMPの接着機構として、ICAM-1の発現異常が関与する可能性を示唆した。血小板、MP放出活性を生じる糖化最終産物(AGE)の器官培養による長時間の頸動脈への処置は、血管収縮の減弱を生じることが認められた。糖尿病ラット大腿動脈において、ヌクレオチド誘発収縮反応の異常が認められた。また、糖尿病性血管機能障害機序として、GLP-1 は、直接内皮細胞に作用することにより、β-arrestin2 を細胞膜上に移行させ、GRK2 活性を抑制し、Akt/eNOS経路を活性化することが認められた。以上のことから糖尿病時、血小板由来 MPに含まれる ERK1/2, 血管内ERK活性が血管内皮障害を惹起させることが示唆され、更にERK 阻害薬の慢性投与は、糖尿病性血管内皮障害、eNOS活性、NOx産生、MPの含有量、質的変化を改善し、糖尿病性血管障害の治療ターゲットとなることを論文 7 報、学会発表 34 件報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和 3 年度は、糖尿病モデルにおける血管障害治療(既存の治療薬の慢性投与等を行いつつ)と血小板機能を中心として、モデル動物からの血小板抽出、MPを含む由来物質の抽出方法の確立を進め、血小板機能、血小板由来物質機能、標的血管部位、血管細胞、血液因子等の重要なターゲットを見いだすことを達成目標としつつ、血小板及び由来物質、類似物質を使用し、血小板活性化、放出機序、血小板放出物質の特定、血管接着、血管機能及び分子メカニズムを明らかにすることを達成目標としている。 本研究から糖尿病時において、血小板由来 MP の抽出方法を確立し、MP 中の活性タンパク質の同定、ERK 活性、eNOS 量の測定、更に糖尿病時の内皮細胞内の ERK1/2 活性の阻害や、インドキシル硫酸 (IS)、 AGE、ヌクレオチドのようなMP 誘発因子の阻害、GLP-1 アナログなどの治療薬は、内皮細胞 NOS活性の増加を生じさせ、新たな糖尿病性血管内皮障害の改善アプローチに繋がることを明らかにした。 以上の結果は、糖尿病時における血小板と血管障害において、新規メカニズム、新規治療薬のターゲットを見いだし、次年度以降、これらの成果を基に大いに応用展開できる。この様な結果から、コロナ過のため規模が縮小してはいるものの、研究のターゲットを見いだし、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病時の血管機能障害と血小板の機序として、血小板由来 MP の産生増加、ICAM を介した血管内皮細胞への接着、NOS 活性の低下、内皮機能低下、ERK 活性の増加が起因していることが明らかになったので、これらのシグナルを中心として更に分子機構を明らかにしたい。 糖尿病時における血管機能障害の新規機序として、GLP-1 低下や arrestin シグナル異常の関与を示唆したので、血管部位等の詳細を検討ししつつ、既存治療薬の慢性投与、血小板との相互作用も検討する。 2 型糖尿病モデル動物を用いて、MP 種と血液因子、各種血管部位作用の関係性を因子解析し、in vitro、ex vivo 実験から、生体内血小板 MP 産生機序、MP 種-各部位血管シグナル伝達解析を統合し、疾患動物に投与する糖尿病性血管機能障害治療薬を提案することを達成目標とする。昨年度の結果から、ERKが重要な役割をしていることが明らかになったので、人工的に作成したMP やリポソームに、ERK サイレンシング遺伝子(miRNA インヒビター;RNA mimic 、pre-miRNA 発現プラスミド等)を導入し、それらを ob/ob 肥満マウス、高脂血症負荷マウス、db/db マウス糖尿病モデルに投与し、代謝機能、血管内皮細胞機能低下への改善効果も検討する予定である。
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