研究課題/領域番号 |
21K06884
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
矢崎 正英 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (70372513)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | AHアミロイドーシス / 診断抗体 / 免疫グロブリン重鎖 / 重鎖可変領域 |
研究実績の概要 |
本研究では患者におけるアミロイド蛋白やM蛋白のアミノ酸配列を詳細に解析し、①AHアミロイド蛋白を認識する診断用抗体の開発に挑戦する ②その抗体を用いた免疫ブロット法で、患者血清中にアミロイド原性の遊離重鎖フラグメントを同定し、血清診断マーカーを開発する ③患者における重鎖の断片化機構を検討し、アミロイド線維形成機序を解明する。本研究により本症の診断が簡便に行えるようになり、また重鎖断片化機序の解析から、将来的に疾患特異的治療法の開発につなげたいと考えている。令和3年度は、①について自験例3名のアミロイド蛋白の解析から、過去の免疫グロブリン重鎖配列のdata baseとも比較して、特に相同性の高い部分を選び出し、3種類のウサギ抗重鎖可変領域ポリクローナル抗体を作成した。3種類中2種類の抗体を用いてAHアミロイドーシス患者13名と64名の他病型のアミロイドーシス患者の病理組織標本を用いて免疫組織化学染色を行った。開発抗体により本症患者の13例中12例が免疫染色で陽性となった。また、64名の非AHアミロイドーシス患者の中では60名の検体で免疫染色陰性となった。②について開発抗体を用いて免疫ブロット解析を行ったが、アミロイド蛋白と血清のどちらの検体からも約11kDaのバンド(N末端重鎖フラグメント)が検出され、この開発抗体を用いることで、免疫染色により90%以上の本症患者の診断が可能であった。また患者血清中には、アミロイド蛋白と同じ分子量のN末端の可変領域の断片が存在することも明らかにできた。現在患者・非患者群の血清について、免疫ブロット解析を施行し、血清マーカーの確立研究を施行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感度・特異度として90%以上の抗体を確立でき、免疫染色だけでなく免疫ブロット解析にも応用可能であることを明らかにできた。複数の患者で、血清中に抗重鎖可変領域断片の存在も確認できており、現在免疫ブロット解析を、多数の非患者群で施行中である。
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今後の研究の推進方策 |
免疫ブロット解析を多数の患者・非患者群で施行し、血清中の重鎖可変領域断片の有無を確認し、できれば断片の血清中の存在濃度を定量化できる系をELISA等で確立する。断片化の機序としては、患者血清M蛋白の配列の決定、断片化部位の配列の決定等で、断片化機序を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で学会への現地参加の取りやめ等での旅費が不要となったこと、試薬や実験器具等、既存のものを使用できた等により、次年度使用額が生じた。次年度は多くの試薬の購入が必要で、抗体の新規作成等も必要になる可能性があるため、次年度使用額と令和4年度請求額を使用する予定。
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