研究課題
本研究では、難治性腫瘍の代表的な膵胆管系腫瘍の予後因子であるムチン抗原発現の検討を基盤とし、術前生検検体などでの解析が腫瘍の質的診断のみでなく、早期診断あるいは治療効果予測に応用可能であることを明らかにすることを目的としている。手術で得られた検体の解析結果では、ムチン抗原の発現やメチル化状況が腫瘍の悪性度と関連しており、患者予後の予測に役立つことを明らかにしてきた。手術前に採取された超音波ガイド下穿刺生検(EUS-FNA)検体、膵液や胆汁などの検体でもムチン及びムチン関連因子の解析を行っており、その解析結果が予後予測に役立つことを明らかにしてきた。しかし解析結果の判断は多種類存在するムチンごとに設定しなければならず、その設定に精通した人員と膨大な解析時間が必要であった。また症例数の増加や解析事項の増加とともに、解析の煩雑さや結果の曖昧さが増加してきた。解析結果はより正確性が必要で、迅速な結果が望まれるにも関わらず、我々の望む方向とは逆行する事態に陥り、実臨床への還元にむけての障壁となっていた。そこで、まずは膵腫瘍に関して機械学習を用いて解析することに着手し、実験結果を半自動的に解析することにある程度成功することが出来た。またムチンのみでなく、ムチンに関連する因子やムチン発現に関連する因子にもターゲットを広げており、早期発見や予後予測に関連する因子をより簡便に抽出し、実臨床に還元できることを目指している。現在は胆管系腫瘍でも同様の解析を行うことが可能か解析しており、膵同様ある程度の成果が得られた。また胆汁中のある種の微生物との関連もあることがわかってきた。
2: おおむね順調に進展している
症例の収集、解析は予定通りに進捗している。症例ごとの解析も進んでおり、全体的な傾向を把握しつつある。
現在、膵胆管系腫瘍の臨床検体を用いたムチンに関する検討は概ねうまくいっている。今後は、より実際の医療に役立つことができるように、手術前の治療方針の指針の一つになりうるよう、簡便な検査キットの開発や結果の迅速化などを進めていきたい。また胆汁に存在する微生物と腫瘍の悪性度との関連もより詳細に明らかにしていきたい。
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