研究課題/領域番号 |
21K06891
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
奥村 嘉英 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (00792483)
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研究分担者 |
稲垣 宏 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (30232507)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 唾液腺癌 / 粘表皮癌 / 融合遺伝子 |
研究実績の概要 |
申請者は、唾液原発粘表皮癌の1)CRTC1/3-MAML2融合遺伝子陰性例:①腫瘍発生機序に関与する遺伝子異常の検索、②本腫瘍群に特化した病理悪性度分類および予後スコアの構築 2)融合遺伝子陽性例: ①腫瘍進展・高悪性度化に関与する遺伝子異常の検索 ②本腫瘍群の組織学的多様性の検討の上記4点の研究を進めている。本年度は,申請者のグループらは、1)-②と2)-②に焦点を当て研究を行い、以下の新しい知見を明らかにした。 唾液腺原発粘表皮癌177例(融合遺伝子陽性例110例)の組織学的検討を行った.粘表皮癌の組織学的に亜型とされるOncoytic-・Wartin-like-・spindle variantはCRTC1/3-MAML2融合遺伝子陽性例のみに認められ、Clear cell-・ Sclerosing-・Mucinous-・Central variantは 融合遺伝子陽性と陰性共に認めることを明らかにした。さらに本研究においては、Ciliated-・Mucoacinar variantやHigh-grade transformationを有する症例は認めなかった。また組織学的予後不良因子とされるMarked nuclear atypia、 Frequent mitoses、 Extensive necrosisは唾液腺原発粘表皮癌においては非常にまれな所見であり(3-5%)、本研究に用いた粘表皮癌においては、overt keratinisationを認める症例はなかった。本結果は、組織学的多様性を示す粘表皮癌の病理診断に寄与する知見である(Histopathology、2022年)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた研究に関し、その一部が申請者らの研究グループから論文化された。 また、これまでの申請者の研究結果を学会発表する予定である(第46回日本頭頸部癌学会総会 ;2022年6月17日~18日).
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今後の研究の推進方策 |
1.粘表皮癌CRTC1/3-MAML2融合遺伝子陰性例: 唾液腺原発粘表皮癌の約半数にみられる融合遺伝子陰性例の腫瘍発生機序は未だ明らかでない。よって”腫瘍発生機序に関与する遺伝子異常の検索”を目的に、収集し得た融合遺伝子陰性腫瘍(約70症例)のホルマリン固定パラフィン包埋切片からDNA、RNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて解析する予定である.全エクソンは抽出DNAを用いてシーケンスを行い、網羅的に遺伝子異常のスクリーニングを行い、得られた結果はサンガー法、SNaPshot法、アレル特異的PCR法を用いて確認する予定である。また必要に応じてFISH法による遺伝子増幅も検索する予定である。新規融合遺伝子の検索は抽出RNAをArcher FusionPlex RNA Assaysにて解析する予定である。 2.粘表皮癌CRTC1/3-MAML2融合遺伝子陽性例: 融合遺伝子陽性粘表皮癌は時に高悪性度化を示すが、それに関与する遺伝子異常は未だ明らかでない。”腫瘍進展・高悪性度化に関与する遺伝子異常の検索”を目的とし、次世代シーケンサーを用いて網羅的に遺伝子異常を検索する予定である。得られた結果はサンガー法、SNaPshot法、アレル特異的PCR法を 用いて確認する予定である。必要に応じてFISH法による遺伝子増幅も検索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
核酸,蛋白関連の実験は引き続き当教室で行う予定である。次世代 セークエンサー(イルミナ社)、PCR、自動免疫染色装置、FISH染色前処理装置、蛍光顕微鏡装置使用時に要する各種消耗品や特殊薬品(蛍光プローブなど)が今後も継続必要である。また 画像解析装置(IN Cell Analyzer 2000および6000)リアルタイムPCR装置(Takara社およびサーモフィッシャー社)は本学共同研究室に複数台設置されているが、同装置使用時にも同様に消耗品や特殊薬品が必要である。
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