研究課題/領域番号 |
21K06892
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
安平 進士 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 講師 (90311729)
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研究分担者 |
前沢 千早 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 教授 (10326647)
天野 博雄 岩手医科大学, 医学部, 教授 (70302487)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | MAPK経路 / 悪性黒色腫 / 二重特異性フォスファターゼ / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
多くの悪性黒色腫細胞で見られるDUSP4の高発現の意義とDUSP4依存的な細胞増殖の機構を明らかにすることが本研究計画の目的である。SK-28およびA375悪性黒色腫細胞株のDUSP4発現を人為的に抑制すると、DUSP6の発現上昇とERKリン酸化の低下が見られ、これに伴って細胞増殖が抑制されることを我々はすでに明らかにした。 当年度の研究計画にしたがいCrispr-CAS9を用いてSK-28株のDUSP6遺伝子を破壊し上述の現象に対する影響を調べたところ、DUSP4発現抑制時の細胞増殖抑制及びERKリン酸化低下がほとんど消失することが明らかになった。この結果は、DUSP4-DUSP6-ERKという直列のERKリン酸化制御経路(二重抑制経路)が存在し、増殖に影響を与えることを強く示唆する。 次にDUSP6の発現上昇がどのような機構で起きるか調べるため、異所性プロモーターによってドライブされる外来性DUSP6-EGFP遺伝子をSK-28細胞に導入し、DUSP4発現抑制時の発現変化を解析したが、内在性DUSP6タンパク質、異所性プロモーターから発現したDUSP6-EGFPタンパク質のいずれでも量の増加が観察された。また内在性DUSP6遺伝子から転写されるmRNAをリアルタイムPCRで定量したところ、DUSP4発現抑制時のmRNA量は有意に増加しなかった。以上より、上述したDUSP6の発現上昇は翻訳以降のステップで起きていると考えられる。これについて、メチオニンアナログによるDUSP6の翻訳レートの測定及びシクロヘキシミドを用いた分解レートの測定の双方を試みたが、量の増加が翻訳の上昇と分解の低下のいずれによるものかは結論できなかった。 以上の結果の一部について、すでに学会発表及び論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性黒色腫細胞株を用いた実験については、概要の項で述べたように順調に結果が得られており、DUSP4-DUSP6-ERKという直列のERKリン酸化制御経路の存在を示すことができたと考えている。成果の一部について論文発表も行っており、当初の予定どおり研究は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
DUSP6タンパク質には複数のユビキチン化サイトが報告されているので、本年度はこれらの配列と発現上昇の関係について調べるとともに、DUSP4発現抑制時にDUSP6以外のフォスファターゼの発現に変化がないか解析を進める。また当初の計画には含まれていないが、ゼブラフィッシュ個体を用いた実験によりDUSP4の悪性黒色腫発生への関与について示せないか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) コロナ禍による流通不足等の問題で消耗品の購入にやや制限があったことが大きな理由である。 (使用計画) 繰越額は大きくないため、計画に本質的な変更はない。消耗品(試薬等)に使用する予定である。
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