研究課題/領域番号 |
21K06893
|
研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
矢澤 卓也 獨協医科大学, 医学部, 教授 (50251054)
|
研究分担者 |
矢澤 華子 (佐藤華子) 獨協医科大学, 医学部, 講師 (60438132)
柏木 維人 獨協医科大学, 医学部, 助教 (50722451)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 肺癌 / 神経内分泌癌 / REST / MYT1L / 分化 |
研究実績の概要 |
肺腺癌に対するチロシンキナーゼ阻害剤を用いた分子標的治療による神経内分泌癌への形質転換現象が報告されており、肺癌治療領域において大きな問題となっている。癌細胞の形質転換現象は、細胞型、組織型の変化として表現され、一種のダイレクトリプログラミング現象と捉えることもできるが、その機序には不明な点が多く、実験的に再現することは難しい。研究代表者らはこれまでの研究から、肺腺癌細胞を上皮間葉転換状態に置くことが神経内分泌癌細胞への形質転換に必要な条件であることを示してきたが、RB1/TP53異常により上皮間葉転換状態が惹起された肺腺癌細胞にREST遺伝子の編集を加え、更に神経内分泌細胞特異的な転写因子であるASCL1及びPOU3F4遺伝子を共発現させることにより、腺癌細胞から神経内分泌癌細胞への形質転換に成功した。このことにより、RESTを発現欠如することが神経内分泌癌への形質転換に必要かつ重要な条件であることが示された。また神経内分泌癌細胞において、どのようなメカニズムによりREST発現欠如現象が惹起されるのかについて、micro RNA (miRNA)の関与を考え、検討を行った。神経内分泌癌細胞株と非神経内分泌癌細胞株を用い、miRNA発現状態を網羅的に解析したところ、数種のmiRNAが神経内分泌癌細胞株特異的に発現していること、そのうちの1種がREST発現を抑制することを突き止めた。 次にMYT1Lの神経内分泌肺癌発生機序への関与について検討を行った。肺腺癌株に対しRB1、TP53の遺伝子編集を行い、これにMYT1Lを強制発現させることにより神経内分泌癌細胞への形質転換を試みた。結果として、RB1ノックアウト株、TP53ノックアウト株、RB1/TP53ノックアウト株いずれにおいても神経内分泌マーカー、神経特異的転写因子の発現誘導は見られなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非神経内分泌肺癌から神経内分泌肺癌への形質転換に必須の条件が、RB1/TP53不活化による上皮間葉転換状態、RESTの発現欠如、そして神経内分泌細胞特異的転写因子であるASCL1及びPOU3F4の発現であることを明らかにし、またMYT1Lの関与の可能性は低いことを明らかにしたから。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は肺腺癌から神経内分泌癌への形質転換現象におけるREST発現欠如機構の全容解明に尽力していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品の値引き交渉により費用が抑えられたこと、また外部に作成を委託しているウィルスベクターの納期が遅れているために次年度使用額が生じた。次年度も引き続き分子生物学的解析を行うため、次年度使用額をその費用の一部に充当する予定である。
|