研究課題/領域番号 |
21K06898
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
大迫 智 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 研究員 (70535442)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 乳癌 / 生物学的特性 / 長期変化 / 組織型 / サブタイプ / 免疫環境 / 組織マイクロアレイ / 免疫染色 |
研究実績の概要 |
日本で乳癌罹患数が過去数十年で急増し、がん対策における喫緊の課題となっている。1960~80年代に乳癌の日米比較研究が複数行われ、日本人と米国人で乳癌の罹患数および生物学的特性が異なることが明らかとなった。さらに、ハワイ日系人の研究から、将来的に日本人乳癌は米国人乳癌の罹患数および生物学的特性に近づくと予想された。乳癌罹患数については、その予想通りその後40年間で急増した。しかし、生物学的特性の長期変化については、検証されず不明のままである。そこで、本研究では乳癌罹患数が増加する前の1940年代から2020年代までの75年間において、日本人乳癌の生物学的特性(組織型、分子サブタイプなど)、免疫微小環境および臨床病態の変化を、病理組織標本の形態学的・免疫組織化学的評価および臨床情報を用いて明らかにする。今年度は以下の2点を中心に研究を進めた。 1)過去の当院手術症例の臨床病理情報の電子化・構造化 1946年~2021年の乳癌全手術症例36,734症例のうち、1946年~2005年の19,676症例は切り出し図や病理レポートが紙媒体で保管され、電子化されていなかった。そのうち、14,110症例(72%)の電子化を完了させた。同時に、2005年~2019年の15,994症例について、臨床病理情報を構造化するための準備を進めた。 2)1970~80年代手術症例の組織マイクロアレイ作製および臨床病理情報の構造化 術後無治療の935症例を抽出し、組織マイクロアレイ作製を行った。さらに、そのうち273例については、病理組織形態の見直しおよび免疫染色の判定を行い、臨床病理情報の構造化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下の2点は順調に進展している。 ① 1946年~2005年の手術症例19,676例の切り出し図や病理レポートの電子化 ② 2005年~2019年の手術症例15,994例の臨床病理情報の構造化 以下は、研究者の日常診断業務の増大により、やや遅れている。 ③ 年代別に抽出した症例の組織形態の見直しおよび組織マイクロアレイを用いた免疫染色評価
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今後の研究の推進方策 |
1946年~2005年の手術症例19,676例の切り出し図や病理レポートの電子化を完了させる。さらに、年代別に症例を抽出し、組織形態の見直しおよび組織マイクロアレイを用いた効率的な免疫染色評価を行う。2005年~2019年の手術症例15,994例の臨床病理情報の構造化を完了させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫染色の試薬代が予定よりも少なかったため、次年度に繰り越す助成金が発生した。次年度に繰り越す助成金は、組織マイクロアレイ作製の消耗品や免疫染色の試薬代として使用する予定である。
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