研究実績の概要 |
日本で乳癌罹患数が過去数十年で急増し、がん対策における喫緊の課題となっている。1960~80年代に乳癌の日米比較研究が複数行われ、日本人と米国人で乳癌の罹患数および生物学的特性が異なることが明らかとなった。さらに、ハワイ日系人の研究から、将来的に日本人乳癌は米国人乳癌の罹患数および生物学的特性に近づくと予想された。乳癌罹患数については、その予想通りその後40年間で急増した。しかし、生物学的特性の長期変化については、検証されず不明のままである。そこで、本研究では乳癌罹患数が増加する前の1940年代から2020年代までの約75年間において、日本人乳癌の生物学的特性(組織型、分子サブタイプなど)、免疫微小環境および臨床病態の変化を、病理組織標本の形態学的・免疫組織化学的評価および臨床情報を用いて明らかにする。今年度は以下の3点を中心に研究を進めた。 1)標本切り出し図・病理レポートの電子化:1946年~2005年の手術症例19,676例の、診断当時の切り出し図・病理レポートの電子化を完了させた。これにより、すでに完了していた2005年以降の症例と合わせて、全研究期間(1946年~2023年)の39,407症例の電子化が完了した。 2)臨床病理情報の構造化:2005年~2019年の手術症例15,236例の臨床病理情報の構造化を完了させた。これにより、すでに完了していた2019年以降の症例と合わせて、2005年~2023年の全20,823症例の構造化が完了した。 3)1970~80年代の手術症例の予後解析:術後無治療の手術症例935症例の臨床病理情報と予後との関連を統計学的に探索した。原発巣浸潤径、リンパ節転移個数、病期、サブタイプ、腫瘍浸潤リンパ球の程度などにより、自然予後を層別化できることを明らかにした。
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