研究課題/領域番号 |
21K06904
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大上 直秀 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (60346484)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胃癌 / 大腸癌 / 癌幹細胞 / スフェロイド / ALDOC |
研究実績の概要 |
進行胃癌のうち低分化腺癌は未だ予後不良の疾患であり、新規診断マーカー・治療標的の同定が急務となっている。胃の低分化腺癌のドライバー変異としてRHOA、CDH1遺伝子の変異が報告されたが、これらが発癌過程にどのように関わっているのか全く分かっていない。そこで本研究では、RHOA、CDH1の変異により特異的に発現が誘導される遺伝子を同定し、胃癌の病態解明を通して新規診断マーカー・治療開発に資することである。 本年度は大腸癌細胞株DLD-1とWiDrを材料にスフェロイドを作成し、大腸癌の癌幹細胞関連遺伝子の同定を行った。スフェロイドは幹細胞を含むことが知られており、幹細胞の研究にしばしば用いられる。細胞が接着した状態と比較し、スフェロイドを形成した状態で発現が低下していた遺伝子としてALDOCを同定した。外科的に切除された大腸癌135例を材料にALDOCの発現を免疫染色で検討した結果、ALDOCは非腫瘍部ではほとんど染色されな かったが、腫瘍部では明瞭な染色像を認めた。ALDOCは66例(49%)の症例で陽性であった。臨床病理学的因子との関連を解析した結果、ALDOC陽性例は優位にT因子、M因子が上昇していた。単変量、多変量解析で予後との関連を解析した結果、ALDOCは陽性は独立した予後不良因子であった。癌幹細胞マーカーであるCD44の免疫染色も合わせて行い、ALDOCの発現と比較したところ、ALDOC陽性大腸癌細胞はCD44も陽性であることが明らかとなった。 大腸癌細胞株を材料に、ALDOCの発現をsiRNAでノックダウンし、ALDOCの機能解析を行った。その結果、ALDOCのノックダウンにより、スフェロイド形成能が低下し、乳酸の産生能も低下した。 以上の結果から、ALDOC遺伝子は癌幹細胞に重要な役割を担っている可能性が高く、遺伝子の機能解析に向けて準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は胃癌の病態解明を通して新規診断マーカー・治療開発に資することである。本年度の解析から、癌幹細胞に関連するALOC遺伝子を同定した。現在機能解析中であるが、癌幹細胞において発現していることから、癌幹細胞の維持に重要な役割を担っていると考えられる。これらの遺伝子の阻害剤は新規癌治療薬として期待できることから、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は胃癌の病態解明を通して新規診断マーカー・治療開発に資することである。今後はALDOC遺伝子の機能解析を行い、これらの遺伝子が癌幹細胞の維持にどのような役割を担っているのかを明らかにする。さらに、これらの遺伝子の阻害剤を癌細胞に投与し、治療薬としての可能性も検討する。 ALDOCに加え、DMBTやKIF18等の新規癌幹細胞関連遺伝子も同定しており、これらの遺伝子の解析も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
ALDOC遺伝子のノックダウン効果を当初の予定よりも明瞭に認めたため、追加でノックダウン用のベクターを作成する必要がなくなったため、次年度使用額が生じた。 新規癌幹細胞関連遺伝子の発現解析のための抗体購入に使用する計画である。
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