研究実績の概要 |
2011年1月から2013年12月までに当院呼吸器外科で肺切除された177例の原発性非小細胞性肺癌において、抗HAI-1抗体(EPR 15652, rabbit monoclonal, Abcam)を用いて免疫染色を施行した。肺癌病理診断の細分類はWHO分類に従った。免疫染色の評価方法は、全周性に膜陽性である腫瘍細胞が病変部位の50%以上存在する場合を陽性とした。免疫染色強度は考慮しなかった。 カイ2乗検定を用いた臨床病理学的検討では、肺腺癌症例において、pStageにのみ有意差が見られた。kaplan-meier plotterを用いた遺伝子発現でも、肺癌全体や肺腺癌でHAI-1高発現群はHAI-1低発現群と比較して、有意に予後不良であった(p<0.01)。今回の免疫染色による検討でも。全生存期間における肺腺癌のHAI-1高発現群では、HAI-1低発現群と比較して、有意に予後不良であった(p=0.028)。 次に、pStageI肺腺癌において検討した。kaplan-meier plotterを用いた遺伝子発現でも、同様にHAI-1高発現群はHAI-1低発現群と比較して、有意に予後不良であった(p<0.01)。今回の免疫染色による検討でも。全生存期間における肺腺癌のHAI-1高発現群では、HAI-1低発現群と比較して、有意差はみられなかったが(p=0.1197)、無病生存期間ではHAI-1高発現群では、HAI-1低発現群と比較して有意差がみられた(p=0.0272)。 以上から、HAI-1は肺腺癌において、予後不良因子である可能性が示唆された。扁平上皮癌では、症例数が少なく、統計学的検討が施行できなかった。今後、HAI-1の肺癌における予後不良に至る機序の詳細を明らかにする必要があると思われる。
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