研究課題/領域番号 |
21K06906
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
藤井 智美 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50623477)
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研究分担者 |
三宅 牧人 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80601400)
内山 智子 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (80745448)
島田 啓司 奈良県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90336850)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / マイクロRNA / SOX9 |
研究実績の概要 |
膀胱癌は、治療後約50%は再発し、その中でも10ー30%は筋層浸潤性膀胱癌に進展する。従って、術後再発の早期発見と浸潤性膀胱癌への進展リスクの予測が極めて重要であると同時に、筋層浸潤性膀胱癌に対する分子標的療法の開発が急務である。特に高異型度の浸潤癌においては形態学的に扁平上皮・腺および神経内分泌分化を示す傾向がある。そこで、発生段階での分化を制御するとされている転写因子Sox9とDNA修復や細胞周期を維持するのに重要なp53に着目し、膀胱癌組織中の発現を検討した。その結果、どちらも表在性膀胱癌(pTa)では発現が低いのに対し、浸潤性膀胱癌(pT1以深)と高異型度膀胱癌である上皮内癌(pTis)ではどちらも高発現していた。このことは、SOX9やp53が浸潤性膀胱癌への進展や再発や転移に重要な分子となっている可能性がある。 まず、症例数を増やして、SOX9とp53の膀胱癌組織における発現について確証を得るため、TUR-Btにて切除された膀胱癌組織を50例選択し、病理診断学的に浸潤癌、非浸潤癌を抽出し、深達度及び異型度で分類した。免疫組織化学染色でSOX9, p53の発現を検討したところ、SOX9は深達度に応じて発現量が増加していることが確認できた。 SOX9の機能を詳細に検討し、膀胱癌の浸潤能や細胞増殖能への関与を明らかにするため、SOX9を標的とするmicroRNAをin silicoで検索した。そのうち、MTS assayによりmiR-138が膀胱癌細胞の増殖を調節していることが明らかになった。引き続き膀胱癌細胞株を用いて、 miR-138とSOX9の尿路上皮癌における詳細な機能解析を始めたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TUR-Btにて切除された膀胱癌組織について、病理診断学的に浸潤癌、非浸潤癌を抽出し、高異型度と低異型度に分類する。薄切標本を用いて免疫組織化学染色法でSOX9とp53の発現を検討した。その結果 SOX9については進達度に応じて発現量が増加していた。p53については有意な差が得られなかった。遺伝子異常との関連性について、膀胱癌組織からDNAを抽出し、SOX9およびp53のCDS領域をカバーするカスタムプライマーを用いてDNAライブラリーを作成し、MiniSeq (Illumina社)で全エクソンのシークエンス解析を約半分の症例で行ったところ、SOX9およびp53の遺伝子変異と免疫組織化学染色の結果とは相関性が明確には得られなかった。SOX9およびp53の発現には遺伝子変異ではなく、細胞内シグナル伝達機構が大きく関与していることを想定し、尿路上皮癌細胞株を用いたin vitroの解析を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
尿路上皮癌細胞株を用いたin vitroの解析では、細胞増殖能として、MTS assay, AnnexinV, 細胞周期、Autophagy(LC3測定)を順次行うことで、miR-138とその標的分子の一つであるSOX9の細胞増殖能への寄与を検討することと、浸潤能については、マトリゲルアッセイを行うことと、組織学的評価として脈管浸潤の有無をCD31およびD2-40の免疫組織化学染色にて検討・評価する。
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