研究課題/領域番号 |
21K06907
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
柴崎 晶彦 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 助教 (20445109)
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研究分担者 |
前沢 千早 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 教授 (10326647)
天野 博雄 岩手医科大学, 医学部, 教授 (70302487)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NEF2L2 / ヘムオキシゲナーゼ / 浸潤転移 |
研究実績の概要 |
悪性黒色腫(メラノーマ)の転移抑制および薬剤耐性は、治療上の大きな課題である。申請者はこれまでの研究により、一部のメラノーマが転写因子NFE2L2を高発現し、これらは高転移性であることを見出している。一方、近年、非小細胞肺がんにおいて、NFE2L2が誘導するヘムオキシゲナーゼが、転写因子BACH1を安定化し転移を促進することが示されたが、本経路に対する特異的薬剤により転移が抑制できるか未だ検討されていない。そこで本研究は、NFE2L2経路の中間因子であるヘムオキシゲナーゼの活性または細胞内ヘム量を薬剤で制御することで、メラノーマの浸潤・転移できるかについて、培養細胞、実験動物レベルにおいて検討する。さらに、分子標的治療薬であるベムラフェニブに対して耐性を示すメラノーマの転移を上記方法により抑制できるか検討する。以上より、メラノーマ治療の新たな分子標的を提示することを目的とする。 転写共益因子PGC1alphaは、インテグリンを介した細胞浸潤を制御する。これまで他の研究者により、メラノーマ治療薬であるベムラフェニブは転写共益因子PGC1alphaを誘導し、インテグリンを介した浸潤転移経路が示されている。一方、申請者は、PGC1alpha経路により浸潤が抑制されないメラノーマ細胞株を見出しており、現在本メラノーマ細胞株を用いた、NFE2L2を介したヘムオキシゲナーゼ経路について解析を行っている。具体的には、NFE2L2をiRNA法により減少することで、ヘムオキシゲナーゼやBACH1の変化につき、主にウェスタン法、マトリゲル法により評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、「①NFE2L2経路の浸潤・転移への関与についての解析」と「②ヘムオキシゲナーゼ阻害剤およびヘミン等の浸潤能に対する効果の解析」を計画していた。 ①については、いくつかのメラノーマ細胞株をもちいて、PGC1alpha非依存的に、浸潤抑制される細胞株を検索した。その結果、(1) ベムラフェニブによるPGC1alphaの誘導は、G361以外では誘導は見られないこと、(2) ゲル浸潤アッセイにより、G361はベムラフェニブによる強力な浸潤抑制が見られるが、A7細胞は抑制されないこと、一方、(3) A7細胞はNFE2L2の減少により浸潤が抑制されること、(4) A7細胞はNFE2L2を高発現するしており、NFE2L2を抑制するとBACH1は減少することが明らかとなった。以上より現段階で、ベムラフェニブが奏効しない一部のメラノーマにおいて、NFE2L2経路を遮断することが転移抑制に有効である可能性が示唆されており、概ね予定通りである。 ②については現在進行中であり、具体的な成果は得られていない。理由は①の解析に予想以上の時間がかかったためである。次年度の計画と合わせ今後遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上記②に加えて、モデル動物を用いた転移抑制・標準治療薬剤の併用効果の検討を行う。 当初の計画では、モデル動物としてマウスを用いた実験系を用いる予定だったが、現時点では、ゼブラフィッシュを用いた実験系を予定している。その準備として、免疫不全ゼブラフィッシュの導入する。免疫不全ゼブラフィッシュの皮下に各種メラノーマ細胞株を皮下移植し、安定的に増殖、転移をする実験系を創出する。続いて当該細胞株を移植したゼブラフィッシュに、ヘムオキシゲナーゼ阻害剤またはヘミンを投与し、各臓器への転移の状態を経時的に解析する。本解析によりそれぞれの薬剤の投与濃度やタイミングを検討する。また並行して、皮下にBRAFV600Eなどドライバー遺伝子をエレクトロポレーションし、メラノーマを発生させる実験系の確立も目指す。当該実験系においても、上記同様の検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の研究計画の遅れにより、試薬の購入時期に遅延が生じたため。
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