研究実績の概要 |
これまで我々は内視鏡的に切除された腺窩上皮型胃癌について解析を行い、胃通常型腺癌と比較することで臨床病理学的および分子病理学的特徴について報告を 行なっている。現在までの解析で、胃腺窩上皮癌は低異型度の腫瘍の頻度が高いにも関わらず、高い細胞増殖能を示す腫瘍が多くみられ、細胞増殖能を反映する Ki-67陽性細胞率は通常型胃癌と同程度であることが明らかとなっている。エピゲノムな異常では、2パネル法を用いたDNAメチル化解析で、通常型胃癌と比較し て低メチル化状態を示す腫瘍の頻度が高く、高メチル化状態を示す腫瘍の頻度が低いことが明らかとなった。ゲノムの異常としては、allelic imbalance (AI) 解析において、染色体1p, 5q, 18q, 22qにおけるAIの頻度が通常型胃癌と比較して高いことが明らかにされ、症例数は少ないものの (4症例)、DNAマイクロアレーを用いたCNA解析において、多数の染色体領域でDNAコピー数の増加および減少が認められた。これらの所見より、胃腺窩上皮癌は胃癌において独立した組織亜型であり、通常型分化型胃癌と比較して、分子病理学的特徴が異なり、より悪性度の高い組織亜型である可能性が推測された。最終年度においてはこれらの解析に加え、パラフィン切片から抽出した DNA を用いて、次世代シークエンサー (Next generation sequencing, NGS) を使用して、各種遺伝子の変異解析を行った。解析可能であった30例の腺窩上皮癌においてはKRAS (2例)、TP53 (2例)、APC (1例) 変異が認められたが、いずれも頻度が低く、低異型度および高異型度通常型胃癌と比較して、変異の頻度に有意差は認められなかった。
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