研究課題/領域番号 |
21K06912
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
福村 由紀 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90407312)
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研究分担者 |
平林 健一 東海大学, 医学部, 准教授 (60514388)
齋藤 剛 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80439736)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 好酸性乳頭状腫瘍 / 融合遺伝子 / 膵腫瘍 / 胆管腫瘍 / PRKACA / PRKACB / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
膵胆管好酸性乳頭状腫瘍(Pancreatobiliary oncocytic papillary neoplasm: IOPN)では、PRKACA, PRKACB遺伝子の作用を増強する遺伝子異常がみられる。本研究は、その遺伝子異常がどのようにIOPN腫瘍の形成に作用しているかを解明し、IOPN腫瘍の病理診断力の向上、治療法を開拓することを目指すものである。 2021年度はIOPN腫瘍でみられる形態異常である細胞質内ミトコンドリアの異常貯留を伴う他臓器(甲状腺、腎臓、唾液腺)および特殊型肝癌(fibrolamelllar carcinoma)という類似腫瘍に対し、RT-PCR法を用いた遺伝子異常解析を行い甲状腺、腎臓、唾液腺での類似腫瘍には本遺伝子異常は認めず、上記特殊型肝癌には認めることを明らかにした。また、IOPN腫瘍の周囲病変での解析を行い、IOPN腫瘍の形成機転を示唆するデータを得、現在英文論文投稿中である。 また、IOPNをPRKACA増強群とPRKACB増強群に二群化し、これらにおける遺伝子発現状況を、特に血管新生、上皮間葉移行、癌幹細胞性に着目して解析し(nCounter法)、さらに、組織細胞形態の比較、免疫染色性、臨床病理像の比較を行った。二群間に有意差を示す事項は認めなかったが、いくつかの遺伝子発現においてそれぞれの群で特徴があり、現在これらの遺伝子発現差の再現性・意義の確認を行っている。さらに、IOPN腫瘍で見られるPRKACA、PRKACB遺伝子異常を導入した株化細胞で、その作用機序の検討を行うべく、現在培養細胞や培地の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IOPN腫瘍で見られる遺伝子異常をヒト他臓器の類似疾患やIOPN腫瘍の周囲に見られる病変部で調べ、ヒトIOPN腫瘍の形成機転を示唆するデータを獲得できた点は当初の計画以上の大きな成果と考えている。 本研究では、IOPN腫瘍における遺伝子異常の作用機序の解明する手法として、A. ヒトIOPN腫瘍のPRKACA増強群とPRKACB増強群における違いから候補遺伝子を絞るものとB. 遺伝子異常導入株化細胞を用いた検討を行うが、前者において、組織細胞形態、免疫染色性、臨床病理像に明らかな差を認めず、遺伝子発現量においても有意差を示すものが同定されなかった(ただし、傾向はあるため、現在追求中である)ため、上記、検討A,Bが当初の予定よりやや遅れていると判定する。
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今後の研究の推進方策 |
膵胆管好酸性乳頭状腫瘍(Pancreatobiliary oncocytic papillary neoplasm: IOPN)において、PRKACA, PRKACB遺伝子異常がどのようにIOPN腫瘍の形成に作用しているかを解明するために、下記の2つの方向から研究を進める。 (1)2021年度に、IOPNをPRKACA増強群とPRKACB増強群に二群化し遺伝子発現状況を調べたところ、有意差には至らなかったが、いくつかの遺伝子発現においてそれぞれの群で特徴が見られたため、これらの遺伝子発現差の再現性を確認した上で、その上流・下流因子発現を調べ、腫瘍の臨床病理像・組織像・免疫染色性との関連を調べ、腫瘍形成における意義を明らかにする。 (2)IOPN腫瘍で見られるPRKACA、PRKACB遺伝子異常を導入した株化細胞とこれらの遺伝子高発現細胞を用い、これらで見られる蛋白リン酸化、遺伝子発現解析を行い、また、特にミトコンドリア内キナーゼ活性やアポトーシス抑制系に着目し、解析を進める。同定された因子をヒト手術材料で確認していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度後半に予定していた株化細胞での検討の開始が2022年度にずれたため(他の検討に時間を要したため)。 2022年度より株化細胞および培地、関連試薬の購入、遺伝子導入実験に使用する計画となっている。
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