研究実績の概要 |
われわれは、若年性乳癌(AYA乳癌)の癌化機序におけるMYC高発現の有無、MYC遺伝子増幅の頻度、細胞増殖/細胞周期経路の活性化、MYC-E2F5 family連関解明を目的として本研究を開始した。昨年までの検討で、次の臨床病理学的結果を得ている。(1)AYA群43例とnon-AYA対象群110例(55歳以上、傾向マッチング)を比較検討した。(1-a)c-myc IHC陽性症例の割合は、AYA群で79.0%(34/43)、non-AYA群で39.0%(43/110)であり、AYA群で有意に多かった(P<0.0001)。(1-b)AYA群、non-AYA群別の検討では、いずれも群においても高悪性度症例 (核異型度/組織学的異型度高値、Ki-67陽性率20%以上、トリプルネガティブ乳癌)で、c-myc IHCのAllred scoreが高値となる傾向が示された。(1-c)AYA群とnon-AYA群を比較したところ、c-myc陽性/陰性症例数、c-myc Allred score平均値のいずれも、低悪性度グループ間において有意差が検出されたが、高悪性度グループ間では有意差は検出されなかった。 本年度は、(2)AYA乳癌(A群)/non-AYA乳癌(C群)それぞれについて、c-myc IHC陽性(P群)/陰性(N群)の4群(AP, AN, CP, CN群)各5症例、計20症例について、RNA sequenceを行った。(2-a)RNAseq解析で得られた18,082遺伝子のvolcano plot解析の結果、AP群ではAN群に対して、315遺伝子が発現上昇し、395遺伝子が発現低下していた。(2-b)KEGG Pathway解析によると、AP群/AN群の変化が最も有意であった。(2-c)AN群に対してAP群で発現上昇、発現低下が指摘された遺伝子が明らかになった。
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