研究課題/領域番号 |
21K06922
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大橋 健一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40231203)
|
研究分担者 |
伊藤 崇 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (20516314)
小林 大輔 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (70361699)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 食道癌 / 扁平上皮癌 / 表在癌 / リンパ節転移 / 上皮間葉転換 / 蔟出 |
研究実績の概要 |
表在型食道扁平上皮癌は、内視鏡的に切除されることが多くなったが、予後判定や治療方針決定のため、リンパ節転移予測因子、客観的な指標の確立が重要である。今回の研究では食道粘膜下浸潤扁平上皮癌において、浸潤先端部の組織像、癌浸潤、EMT(epithelial mesenchymal transition)関連因子の発現について解析し、リンパ節転移予測における意義を明らかにすることを目的としている。 研究材料は1999年~2019年に東京医科歯科大学医学部附属病院で外科的切除された表在型食道扁平上皮癌のうち、粘膜下浸潤癌(SM癌)71例(平均年齢67歳、男性62名女性9名)のホルマリン固定・パラフィン包埋組織であり、腫瘍径、深達度、脈管侵襲、分化度、浸潤様式等の病理学的所見を評価した。粘膜下浸潤距離については最深部での粘膜筋板からの浸潤距離を計測した。BD(budding)の計測、DI(droplet infiltration)の判定も行った。EMT関連分子として、Eカドヘリンとbetaカテニンの発現について免疫組織化学的に評価した。 浸潤先端部の組織像について、BDとリンパ節転移との間に相関がみられ、感度と特異度のバランスもよく、優れた指標であると考えられた。食道表在癌においてもBDがリンパ節転移予測因子として有用である可能性が示唆された。浸潤距離は、ROC曲線で定めた600micronで群分けすると、リンパ節点との相関が認められた。Eカドヘリン、betaカテニンの発現は腫瘍先端部で減弱を示し、浸潤先端部におけるEカドヘリンの減弱はBDとDIとの相関が認められた。浸潤先進部におけるBDがEMTの分子生物学的プロセスを形態学的に反映していると考えられた。今後他のEMT関連分子についても検討を進めたいと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
EMT関連分子の免役染色の結果が安定せず、条件決めに時間がかかってしまった。また、代表的なEMT関連分子であるE-cadherin, beta-cateninとリンパ節転移との直接的な相関が得られなかった点が予想外であった。EMT関連分子の発現については、RT-PCR法を使用したmRNAの定量によっても解析を進めているが、十分なmRNA量をパラフィン切片から回収すること、腫瘍細胞のみをレーザーマイクロダイセクション法によって切り出して抽出する実験条件を確立するのに時間が予想以上にかかっている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、Eカドヘリン, beta-カテニン以外のEMT関連分子の発現を免役染色によってさらに検討し、リンパ節転移、BD, DIとの関連を解析したい。EMT関連分子の発現については、レーザーマイクロダイセクション、real time RT-PCR法を利用して定量解析を進めたい。浸潤先進部からmRNAが十分量回収できる症例があれば、EMT関連分子、microRNA、その他癌浸潤に関連する分子の発現について網羅的な解析も行い、リンパ節転移、BD, BI等との相関を明らかにして、食道早期の扁平上皮癌の浸潤、転移等のマーカーになり得る分子を明らかにして、早期食道扁平上皮癌が浸潤、進展していく分子メカニズムを明らかにしていきたいと考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
食道癌パラフィンブロックからRNAを抽出して、癌の浸潤、EMTに関連する分子のmRNAの発現、網羅的解析を進める計画を立てていたが、十分量のmRNAを回収する条件設定に時間が予想以上にかかり、それにかかる費用の使用計画に遅れが生じたため。来年度については条件決めを早期に完了させて、発現mRNA改正期を進めていきたい。
|