局所進行非小細胞肺癌には術前治療(NAT)ののち切除が行われ、病理医は切除標本を用いてその効果を組織学的に評価する。主要病理学的奏効(MPR)は近年、治療評価や経済的な生存代用指標として用いられているが、観察者間のばらつきや再現性の低さがしばしば指摘されている。本研究では、ヘマトキシリン・エオジン染色組織のデジタル病理画像からMPRを予測するディープラーニング(DL)モデルを開発し、実臨床におけるその有用性を検証した。 NAT後に切除された原発性非小細胞肺癌125例を収集,無作為に学習用症例/検証用症例とテスト用症例に分けた。ネットワークには研究者らが開発した異なる視野画像で学習した複数の畳み込みニューラルネットワークを適応的に重み付けできるマルチスケールパッチモデルを使用した。モデルを評価するために3重の交差検証を行った。テスト症例では、2クラス混同行列と受信者動作特性曲線(ROC曲線)を用いて、学習データを作成した病理医が評価したデータ(RevD)、そうでない病理医が評価したデータ(PriD)、およびDLベースのモデルが予測した生存腫瘍の割合を比較し、MPRを達成した症例とMPRを達成しなかった症例の間で生存分析を行った。 結果、交差試験では、精度は0.859、平均F1スコアは0.805であった。テスト症例では、RevDによる精度と平均F1スコアはそれぞれ0.986、0.985、0.943、0.943であった。ROC曲線下面積は、RevD 0.999、PriD 0.978であった。MPRを達成した症例の無病生存率は、RevDおよびPriDを用いた場合、非MPR症例の無病生存率よりも有意に良好であり(P < 0.001 および P=0.001),DLモデルは病理医の評価を支援し、患者のMPRを正確に判定することができる可能性が示された。今後、他の癌腫での展開が期待される。
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