研究課題/領域番号 |
21K06926
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
羅 奕 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (30633797)
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研究分担者 |
國安 弘基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00253055)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ドーマンシー / 遅発性転移 / miR-494 / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
乳癌では遅発性転移再発が臨床的な問題となっており、とくにトリプルネガティブ乳癌ではその頻度が高いとの報告もある。そこで遅発性転移に関連するマイクロRNAを検討していたところmiR-494が抽出された。遅発性転移にはがんの休眠状態が関与している。我々はこれまでに、リノール酸(LA)でがん細胞を長期間処理すると、休眠状態のような表現型が誘導されることを報告してきた。マウス大腸がん細胞株CT26をLAで長期処理すると、静止状態が誘導された。この細胞を同系マウスに皮下接種し、LA食を与えたところ、接種されたがん細胞は静止状態を維持し、休眠状態を示した。LA処理したCT26細胞は、酸化的リン酸化、解糖、エネルギー産生の低下、制御因子であるPgc1αとMycCの発現低下がみられた。MicroRNAの発現プロファイリングにより、LAがmiR-494の発現を増加させることが明らかになった。Pgc1αとMycCの発現は、miR-494 mimicによって誘導された。miR-494 の発現は、LA によって生じるミトコンドリア酸化ストレスによって増強された。同系マウス皮下腫瘍モデルにおいて、LA食による成長抑制、LA前処理+LA食による増殖遅延は、miR-494 mimic投与と同様の効果を示すことが分かった。一方、LAの効果はmiR-494阻害剤で消失した。ヒト大腸癌組織の解析から、miR-494は非転移例と同時肝転移例では低レベルであったが、遅延肝転移例では高レベルで発現し、PGC1αとMYCCの発現も低下していることが明らかになった。これらの結果から、miR-494が休眠癌細胞を標的とする上で有用である可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遅発性転移を誘導するマイクロRNAを発見したことは、乳癌の遅発性転移の機序解明に大きな足掛かりとなる。
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今後の研究の推進方策 |
上記研究は、大腸癌で施行したが今後はトリプルネガティブ乳癌を含む乳癌で検討する。また、このマイクロRNAとHMGB1との関連についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
乳癌細胞株を用いた動物実験が年度内に施行できなかったため、次年度にこの実験を施行する予定である。この実験の費用を次年度使用額とした。
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