研究課題/領域番号 |
21K06928
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
安田 政実 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (50242508)
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研究分担者 |
長谷川 幸清 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (30534193)
宮澤 昌樹 東海大学, 医学部, 客員講師 (30624572)
矢野 光剛 大分大学, 医学部, 助教 (70817064)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / 低酸素 / HIF-1 / HDAC |
研究実績の概要 |
卵巣癌(悪性上皮性腫瘍)を対象に,①手術検体でのHDACやHIF-1αとこれらの上流・下流因子の蛋白,mRNAレベルの解析,②細胞株でのHDAC抑制によるHIF-1αの発現と局在の変化を検証,③細胞株移植マウスでの薬剤投与実験による臨床応用の追究,へと展開する.すなわち,本研究では卵巣癌の化学療法抵抗性におけるHDACやHIF-1αの役割/機能性を明らかにすることで同分子の治療標的としての意義を解析する.加えて代謝や核内移行といった過程/メカニズムにも化学療法抵抗性の観点から重み/深度を見出すことを目的としてきた.近い将来においては,治療戦略の一面にこれらの分子が新たな候補して加わることが期待される.また,卵巣明細胞癌培養株を用いてHIF-1α阻害剤であるシリビニンの投与実験を行い,ELISAによる蛋白レベルではHIF-1αが低下していたが,HIF-1α遺伝子の発現は優位に抑制されていなかった.これにより,HIF-1αの機能性が翻訳後の修飾によって抑制される可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年の春ごろからの3年間は新型コロナ感染症によるパンデミックの状況下,共同研究者や研究補助員の往来はすべて控えてきた.そのため,空間共有による作業は基本的には行うことはできなかった.とりわけ,我々がもっとも大きな課題としてきたin vivoでの実験は全く実行されていない.海外での学会発表も2019年の3月が最後となった.主テーマからなる論文も進展はみていない.すなわち,全体的に本研究は遅延状態にある. ただし,この間には卵巣明細胞癌を対象に,治療・予後との観点からlymphocyte-activation gene 3 protein(LAG-3)の発現態度を検討し,LAG-3が予後不良因子となる可能性を得た(論文化を達成).また,WHO2020分類に卵巣癌の新たな組織型として登場した「中腎様腺癌」に着目して,本腫瘍の診断的意義/腫瘍としての独立性についての検討を行い(論文化を到達),これまで検討してきた研究対象である卵巣癌に「中腎様腺癌」を加えることが可能な状況となった.
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今後の研究の推進方策 |
1.既にHDAC阻害剤(ボリノスタット)やHIF-1α阻害剤(シリビニン)投与下での,DNAマイクロアレイ解析を行っているが,異なる細胞株や薬剤間での検討が必要である.標準化学療法に低感受性の細胞株において,HIF-1αやHDACの阻害剤が抵抗性改善に寄与するか否かに着目する.本実験は部分的にはこれまでの成果として結果を得ていることから,補助的に追試を行い,データの精度を確認したい. 2.ヌードマウスに卵巣癌細胞株を移植して,薬剤投与を行う.In vivoモデルにおける移植する細胞株,移植経路,投与薬剤の差異によってHDACなどの発現の変化をみる.卵巣癌細胞株をno treat,HDAC knockout,HIF-1α knockoutの状態でヌードマウスの皮下ならびに腹腔内に移植し,xenograftからなる動物モデルを作製する.
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次年度使用額が生じた理由 |
遅延状況は上記7.で言及した通りであるが,先行実験「HDAC阻害剤(ボリノスタット)やHIF-1α阻害剤(シリビニン)投与下での,DNAマイクロアレイ解析」により幾種類かの遺伝子の発現が増強・抑制することを確証していることから,治療個別化の観点から次には異なる細胞株や薬剤間での比較検討が必要と考えている.とりわけ,標準化学療法に低感受性の細胞株において,HIF-1αやHDACの阻害剤の有効性の検証に焦点をあてる.なお,本研究計画は最終段階に入り,運用可能な研究資金が限られているため,実行可能な部分はこれまでの共同研究者の意思に委ね本研究の意思が継続されていくことを望む.
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