研究課題/領域番号 |
21K06931
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
八尾 隆史 順天堂大学, 医学部, 教授 (20243933)
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研究分担者 |
齋藤 剛 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80439736)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胎児消化管類似癌 / AFP / Glypican-3 / SALL4 / 胃癌 / 大腸癌 / 組織マイクロアレイ / 培養細胞 |
研究実績の概要 |
胃胎児消化管類似癌は、淡明な細胞質を有し3つの胎児消化管マーカー(AFP、Glypican-3、SALL4)のいずれかが発現する癌で、高率に静脈侵襲や肝転移をきたす高悪性度の癌であることを報告してきた。そして、このタイプの癌は大腸にも存在し、同様に好悪性度であることが判明したが、胎児消化管マーカーが発現する癌は、必ずしも淡明な細胞質を有するものだけでないことも判明した。今回新たに大腸癌においては胎児消化管マーカー陽性の癌は、粘液形質としては小腸型と分類不能(未分化)型が多く、その悪性度に関与していることも示唆された(Kurosawa T, Yao T, et al. Pathol Res Pract 2022 in press)。 そこで、胎児消化管マーカーの発現の意義を確立するために、胎児消化管マーカーの発現する胃癌の臨床病理学的および分子生物学的解析をより詳細に行った。進行胃癌687例の組織マイクロアレイを用いた免疫組織化学で、123例(17.9%)が胎児消化管マーカー陽性で、そのうち細胞質が淡明(狭義の胃胎児消化管類似癌)は42例(6.1%)であった。フォローアップデータが入手できた限られた症例(n = 253)では、胎児消化管マーカー陽性癌は陰性癌より生存率が低かったが、胎児消化管マーカー陽性の症例間で淡明な細胞質の有無による生存率に有意差はなかった。このことから細胞質の特徴に関わらず、胎児消化管マーカーの発現が悪性度に関連していることが示唆された。 さらに、SALL4の生物学的機能の解明を目的として、SALL4を発現している胃癌および大腸癌の培養細胞を用いて、siRNAによるSALL4ノックダウンによる遺伝子発現の変化などの解析も計画し、現時点では3つの細胞株でsiRNAを用いたSALL4ノックダウン実験に成功し、これから解析予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胎児消化管マーカーを発現する大腸癌での追加解析による新知見を得ることができ、その結果をまとめた論文が掲載予定である。多数の胃癌における免疫染色結果から有意義なデーターが抽出された。培養細胞を使った実験はまだこれからであるが、現時点では経過順調と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、胎児消化管類似癌における遺伝子(FGFR3、EGFR、NOTCH1、SMO、MET etc)異常に関して、NanoStringによるCNV解析および浸潤および転移関連タンパク質の免疫染色による解析、 さらにSALL4のノックダウンによる生物学的機能の評価に加えて、SALL4によって調節される遺伝子発現ネットワークを分析し、これらの悪性度の高い胃腸腫瘍における未知の治療標的を見つけることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要なものにのみ経費を使用した結果、残高が生じました。
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