研究課題/領域番号 |
21K06932
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
本間 尚子 東邦大学, 医学部, 准教授 (70321875)
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研究分担者 |
林 孝典 藤田医科大学, 医学部, 講師 (40724315)
三上 哲夫 東邦大学, 医学部, 教授 (90286352)
下野 洋平 藤田医科大学, 医学部, 教授 (90594630)
深澤 由里 東邦大学, 医学部, 講師 (90392331)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 結腸癌 / 閉経後女性 / 高齢者 / 右側癌 / ミスマッチ修復タンパク質 / エストロゲン受容体β / エストロゲン濃度 |
研究実績の概要 |
大腸癌の病態におけるエストロゲンの役割は、抑制的とする報告が多いが、促進的とする報告も少なからず存在し、何がそのような差異を生むのか詳細は不明である。我々はこれまでの研究から、患者背景・腫瘍背景によりエストロゲンの役割が異なるとの仮説のもと、閉経後女性結腸癌手術で得られた病理組織検体につき、患者の年齢、腫瘍占拠部位、組織型、ミスマッチ修復タンパク質(MMR)発現状況などを考慮し、エストロゲン関連諸因子の状況を癌部・非癌部で比較した。高齢女性(70歳以上)の右側癌では、癌部でのエストロゲン濃度は非癌部より高かった。大腸粘膜のエストロゲン受容体であるエストロゲン受容体βの発現は、一般的に大腸癌組織では非癌部組織と比較して減弱すると報告されているが、高齢者女性右側結腸癌では癌部・非癌部でほぼ同等であった。また、高齢女性右側結腸癌に多い、髄様/粘液癌、MMR欠損癌でも、癌部でのエストロゲン受容体β発現の減弱がみられなかった。一方、非高齢者(70歳未満)の左側結腸癌では、従来の報告通り、髄様/粘液癌やMMR欠損癌の割合が低く、また、癌部でエストロゲン受容体βの発現減弱がみられた。これらの結果は、閉経後非高齢女性左側結腸癌、髄様/粘液癌、MMR正常癌などにはエストロゲンが抑制的に働く一方、高齢女性右側結腸癌や髄様/粘液癌、MMR欠損癌には、エストロゲンは少なくとも抑制方向には働かないことを示唆するもので、患者背景・腫瘍背景により、結腸癌におけるエストロゲンの役割は異なるとの仮説が支持された。また、この研究過程で、癌部だけでなく、非癌部におけるエストロゲン受容体β発現状況が、患者背景・腫瘍背景により異なることも観察された。癌の発生母地としての非癌部における、そのような違いを生む要因について調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
病理組織検体について知見が集まっており、論文発表も行ったが、患者腫瘍組織片についての研究は、患者背景・腫瘍背景についての情報が不足している部分があり、予定通り進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
エストロゲン受容体β発現状況が、癌部だけでなく、非癌部においても、患者背景・腫瘍背景により異なっているのは予想外であった。大腸癌を発生させる「母地」の違いを生む要因を調べる。患者腫瘍組織片は新たに作製する予定である。潰瘍性大腸炎関連腫瘍についての研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者腫瘍組織片についての実験的研究が予定通り進まなかった。新たな患者腫瘍組織片作製を行う予定である。
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