研究課題/領域番号 |
21K06935
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
矢野 博久 久留米大学, 医学部, 教授 (40220206)
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研究分担者 |
秋葉 純 久留米大学, 大学病院, 教授 (00341305)
小笠原 幸子 久留米大学, 医学部, 准教授 (40258405)
三原 勇太郎 久留米大学, 医学部, 助教 (20869086)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 門脈侵襲 / マイクロアレイ / マイクロダイセクション / 免疫染色 |
研究実績の概要 |
肝細胞癌(HCC)の門脈浸潤(PVI)に密に関連する分子を同定し、HCCにおけるその発現や機能を解明し、更に、悪性度評価のバイオマーカーや治療標的となる可能性について検討することが目的である。 昨年度実施予定の計画が遅れていたが、今年度には外科切除された6例の門脈侵襲(PVI)を伴う肝細胞癌(HCC)の主結節(MT)部、PVI部、非HCC(NT)部から、新しいレーザーマイクロダイセクション装置Leica LMD7を用いて組織を採取し、昨年よりも質の高い解析可能なRNAを抽出することができた。マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を依頼し、NT部、MT部とPVI部の遺伝子を比較して、NT部からPVI部に段階的に上昇する遺伝子の検索を行った。その結果、全症例で有意にPVI部において遺伝子発現が上昇している分子の同定は出来なかったが、少なくとも3症例で遺伝子発現が増加(27分子)あるいは低下(1分子)している分子を28分子同定した。その中で TCGA data base上でがんに関連する15分子に着目し、更にこれまでHCCとの関連性が報告されていない4分子(PHF12、STIM2、CDAN1、SUPT5Hについて検討を開始した。4分子中STIM2にまず着目して、51例のHCC症例をもちいて抗STIM2抗体とベンタナ社製の自動免疫染色装置で発現の検討を行っている。その結果、STIM2の発現とPVIとの間に何らかの有意な関係がある可能性が高いことが示唆されたため、今後、症例数を増やして、さらに検討を加える予定である。 今年度は、進捗は遅れているもののマイクロダイセクションとマイクロアレイ解析によりPVIに関連する因子をいくつか同定し、検証を実施することができた。今後更に他の分子に関する検討や有意な関係が組織で同定された分子に関しては肝癌細胞株を使用した機能解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析に適したHCC症例の選択、レーザーマイクロダイセクションによる組織の採取、解析可能なRNAの抽出、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を実施した。 マイクロアレイ解析によりPVIに関連する分子として4分子を候補として抽出した。その中で免疫染色が最も簡便に実施可能であったSTIM2に着目して、22例のPVIを伴うHCCと29例のPVIのないHCC症例で免疫染色を実施した。染色は染色強度(0,1,2)と染色範囲(0-100%)を定量し、染色スコア(強度x(範囲%/100)の総和)で評価した。また、HCCのMTの辺縁と中心部の染色性を比較し、染色性が同等のもの(0)、辺縁が一部強いもの(1)、辺縁が全体的に強いもの(2)に分類した。 その結果、STIM2の発現はPVI症例で有意に(p=0.003)高く、辺縁の染色性が有意に(p=0.0053)高いことが判明した。また、VPI部での染色性が高い症例はMT部の染色性も高い傾向が見られた。今後は症例数を増やして、更に検討を加える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、免疫染色を用いて、着目した4分子に関する多数症例での検討が必要と思われる。そのためには、場合によっては研究協力者を増やして、研究内容の分担も必要と思われる。また、肝癌培養細胞を用いたPVI関連分子の機能解析にも協力者の必要性があると考えられる。来年度は最終年度にあたるため、研究成果の学会発表が出来るように研究のスピードアップが必要でエフォートを本研究に多く配分する必要性もあると考える。
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