免疫受容体CD96は、NK細胞やCD8T細胞の活性化を抑制するチェックポイント受容体として注目されている。CD96は、NK細胞やCD8T細胞と同様、γδT細胞にも強く発現しているが、γδT細胞におけるCD96の機能については全く明らかになっていない。 申請者は、CD96が、皮膚のγδT細胞の活性化を制御する事で乾癬の病態を調節する可能性を考え、野生型マウスとCD96欠損マウスの背部にIMQを連続塗布し、乾癬を誘導した。CD96欠損マウスでは、皮膚のγδT細胞からのIL-17産生量が野生型マウスと比較して低く、乾癬病態が抑制された。さらに、野生型、またはCD96欠損γδT細胞をRag1欠損マウスの皮膚に移入し、乾癬を誘導すると、CD96欠損γδT細胞を移入したマウスの病態が軽度であった。また、in vitroの実験系において野生型マウスの皮膚から単離したγδT細胞をCD3抗体と共にCD96抗体で刺激すると、IL-23刺激によるIL-17の産生量が増加した。 つまり、γδT細胞上のCD96は活性化受容体として機能し、乾癬病態を増悪している事が示唆された。 これらの結果は、CD96に対する中和抗体が治療薬となりうる可能性を示唆するものである。申請者は、中和能の高い抗CD96抗体を作成し、このCD96中和抗体を乾癬病態誘導前、誘導後に投与したところ、IL-17中和抗体投与群と同程度、乾癬病態を抑制し、IL-17中和抗体と同時に投与しても相乗効果は見られなかった。つまり、抗CD96抗体がIL-17産生を抑制する事で乾癬病態を抑制することが示唆された。 さらに、ヒトの末梢血中のγδT細胞もCD96が高発現しており、in vitroで活性化受容体として機能していることを示した。 これらの結果をまとめて論文投稿した (doi: 10.4049/jimmunol.2200502.)。
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