ビタミンDシグナルは骨代謝のみならず腫瘍発生など様々な生命現象に関与している。同シグナルの作用は主にビタミンD受容体(VDR)など核内受容体(NR)に属する転写因子を介した下流標的遺伝子の転写制御である。NRは特異リガンドのみならず様々な内因性蛋白質によって活性が調節されているが、これまでの創薬研究はリガンドの同定や新規合成に偏っており、内因性蛋白質を対象とするものは少ない。最近我々は最近細胞接着を基点とする一連のシグナルカスケードが、NRのセリン・リン酸化を介してリガンド感受性を著しく亢進させることを報告した。これはキナーゼを標的としてビタミンDシグナルを制御するという新たな治療戦略の可能性を示唆する。そこで本研究では順遺伝学的アプローチによりビタミンDシグナル関連蛋白質を網羅的に同定しようと試みた。まずビタミンDシグナルの蛍光レポーターを恒常発現する細胞株を樹立し、次に全遺伝子に対すプール化されたCRISPR-gRNA発現ベクターを導入した。これらの細胞にビタミンDを低濃度と高濃度で処理し、セルソーターで蛍光強度を測定する。低用量のビタミンDでレポーター活性の高いものを抽出すれば、これにはビタミンDシグナルを負に制御する遺伝子群を機能欠失した細胞群が含まれているはずで、逆もまた真である。この細胞群からゲノミックDNAを回収し取り込まれたsgRNA配列を次世代シークエンシングによって解析することで、ビタミンDシグナルを正負に制御する遺伝子群を約200個程度抽出した。
|