研究課題
プロテアソームは、細胞内のタンパク質分解に関わる巨大なタンパク複合体で、不要・不良な蛋白質の分解だけでなく、細胞内シグナル伝達、抗原提示等、様々な生命現象に関与している。また、プロテアソームを構成する各種サブユニットに遺伝子変異が生じると、周期的な発熱や全身性の慢性炎症を特徴とするプロテアソーム関連自己炎症性疾患を発症する。本研究では、自己炎症性疾患様の症状を呈する患者より見いだされた、プロテアソームβ1iサブユニット遺伝子(PSMB9)に生じたアミノ酸置換を伴うde novoのヘテロ変異を導入したノックインマウス(Psmb9 KIマウス)を用いて、当該変異の病理的意義の解明を目指すと共に、免疫細胞分化におけるプロテアソームの機能的意義の探索を行っている。これまでに、Psmb9 KIヘテロマウスでは野生型マウスと比較して、T細胞、B細胞や樹状細胞の減少が減少している一方で、好中球や単球が増加していることを見いだしている。そこで、これらの異常が免疫細胞自身の異常によるものか、あるいはそれを支持する造血環境の異常によるものか検討するため、ヘテロ変異マウスの骨髄細胞をX線照射した野生型マウスに移植してドナー由来樹状細胞を検討した。その結果、野生型マウスをドナーにした場合と比べ、ヘテロ変異マウスをドナーにした場合では、ドナー由来T細胞数、B細胞数および樹状細胞数のいずれも低下していた。従って、少なくとも免疫細胞自身に異常があることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在、さらなる骨髄移植実験を進めている。また、一部前駆細胞のRNA-seqも開始し、さらに、次の解析に向けたcell sortingなども進めている。これら解析によりPsmb9KIマウス血液細胞分化において、どのような遺伝子発現変化が起こっているのか明らかになることが期待される。また、Psmb9欠損マウスでの解析も順次進めているところである。
順次、前駆細胞などのRNA-seq解析を行って遺伝子発現変化を検討することで、どのような異常が生じているのか解析を進める。同時に、造血幹細胞や前駆細胞などの細胞表面分子の発現について、フローサイトメトリーなどを駆使して、より詳細に検討する。また、Psmb9KIマウスをレシピエントとした骨髄移植実験を行うなど、当該変異が造血環境に与える影響についても検討していく。さらに、皮膚炎など、各種疾患モデルの確立や予備的実験なども合わせて進める。
学会がWEB開催になるなど、出張旅費に未使用が生じるとともに、次年度以降により多くのサンプルについて網羅的遺伝子発現解析を行うための予算の確保に務めた。網羅的遺伝子発現解析を充実させ、その結果に基づく解析を進める予定である。
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