研究課題
令和3年度は、脳実質に少数のヒト小細胞肺がんDMS273細胞を移植し、形成された腫瘍からがん細胞を回収して再度移植するサイクルを5回繰り返し、脳微小環境に順応した亜株の樹立を行った。同時に皮下に少数の細胞を移植するサイクルも行ない、皮下の微小環境に順応した亜株の樹立も試みた。脳サイクル、皮下サイクルとも二系統づつ5サイクルを完了して、脳あるいは皮下での腫瘍形成能が亢進した細胞を得た。これらの亜株は、親株と比べて少ない細胞数でも対応する環境において腫瘍を形成可能である。脳転移に寄与することが知られている遺伝子や、腫瘍形成能に影響する遺伝子など、発現変動の可能性がある複数の遺伝子についてRTq-PCRを行ったところ、得られた計4系統の亜株はそれぞれ異なる発現パターンを持つことがわかった。このことは、それぞれの亜株が異なる機構によって脳あるいは皮下の微小環境に順応した可能性を示唆している。
4: 遅れている
2021年度の計画では、以下の実験AおよびBの二つの実験により小細胞肺がんの脳転移因子候補を探索する予定であった。実験A「自然転移モデルの脳転移巣および他臓器転移巣がん細胞の遺伝子発現比較」については、現在のところ実施できていない。実験B「脳微小環境に順応した亜株の樹立とその解析」については、脳及び皮下微小環境に順応した亜株をそれぞれ二系統ずつ樹立できたが、マイクロアレイによる遺伝子発現プロファイル解析はまだ完了していない。
今後の予定としては、まず、得られた計4系統の亜株について、マイクロアレイによる遺伝子発現プロファイル解析を行って、脳微小環境への順応に必要な遺伝子候補を探索する。この時点で少数の候補に絞り込める場合は、それらの過剰発現細胞を作成し脳における腫瘍形成への影響を検討する。候補が多い場合は、自然転移モデルでの脳転移巣と他臓器への転移巣での発現をRT-qPCRで解析し、脳転移巣で高発現する遺伝子を優先して過剰発現細胞を作成する。4系統の亜株の解析から候補が見出せない場合には、自然転移モデルの脳転移巣および他臓器転移巣がん細胞について、マイクロアレイによる遺伝子発現比較を行う。そのデータと4系統の亜株のデータと統合して、候補遺伝子を抽出する。
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J. Antibiotics
巻: 75 ページ: 77-85
10.1038/s41429-021-00492-5
https://www.bikaken.or.jp