研究課題/領域番号 |
21K06964
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大根田 修 筑波大学, 医学医療系, 教授 (30311872)
|
研究分担者 |
VUONG CAT・KHANH 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20816102)
山下 年晴 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50400677)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 間葉系幹細胞 / 細胞外小胞 / 2型糖尿病 / 若返り |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,間葉系幹細胞(MSC)が幹細胞治療において,汎用性の高い細胞ソースとして使用 できるようにするために機能的に優れたMSCを単離できるヒト由来組織を同定し,かつ疾患を有する患者由来MSCの機能異常及び老化によるMSC機能低下を分子レベル で解明し,その機能を補完するための方法を確立することである. 「機能補完法の確立に向けて」MSCが培養液中に放出する細胞外小胞(EV)を用いて行う.機能性ヒトMSCを用いた研究成果により,EVを用 いたMSCの機能補完法の開発は,幹細胞治療法の概念に変革をもたらすものであり,現在まで申請者が発表した論文は既に多く引用され世界的に評価されている.特に本申請の研究の柱は以下の2つからなる:EVを用いて,1)疾患(特に2型糖尿病DM)由来MSCの機能改善を目指す,2) 加齢MSCの若返り活性化を目指す. 「2型DM患者由来MSCの機能回復」2型DM患者の脂肪組織(AT)から採取したdAT-MSC由来のdEVと健常者のnAT-MSC由来のhEVの機能を比較検討を行なった. 「幼若性EVを用いてMSCの若返りを誘導する」先ず高齢者(70歳代)由来AT-MSC(elderly AT-MSC; eAT-MSC)と新生児(1歳未満)由来AT-MSC(infant AT-MSC; iAT-MSC)の機能について比較検討を行なった.次に、eAT-MSCにiAT-MSC由来iEVを取り 込ませることにより,eAT-MSCの機能回復(若返り)が生じるか検討を行なった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「2型DM患者由来MSCの機能回復」2型DM患者の脂肪組織から採取したdAT-MSC由来のdEVと健常者のnAT-MSC由来のhEVの機能を比較した.nAT-MSCにdEVを投与する と,増殖能には変化がなかったが,脂肪分化能が有意 に上昇することが分かった(Khanh et al.). マウス創傷モデルを用いたin vivo解析では,nAT-MSC をマウスに移植することによりAT-MSCを移植しない群(PBS:バッファーのみ投与)と比較して創傷壊死部位の面積減少が有意に見られることが分かった.一方,dEVをnAT-MSCに取り込ませると,本来あるnAT-MSCの機能が損なわれ,逆にdAT- MSCにnEVを取り込ませるとによりdAT-MSCの分化能及び創傷治癒能の改善が見られることが明らかとなった. 「幼若性EVを用いてMSCの若返りを誘導する」高齢者(70歳代)由来eAT-MSCは, 新生児由来iAT-MSCと比較して,増殖能・分化能加えて創傷治癒能の低下が見られることを報告した(Khanh et al.).分子メカニズムの解析により,eAT-MSCで は,i-AT-MSCに比較して活性酸素ROSの発現が有意に上昇し,特に老化抑制因子であるSirtuin-1 の発現減少に ROS増加が起因していることを申請者は明らかにした(Khanh et al.). そこで本研究では,eAT-MSCの機能低下が,iAT-MSC 由来EV(iEV)により機能回復が見られるかどうかについて解析を行なった.eA T-MSCにiEVを取り 込ませると,増殖能がiAT-MSCと同程度に回復し,加えて骨分化能もiAT-MSCと同程度に回復することを見出した.
|
今後の研究の推進方策 |
「2型DM患者由来MSCの機能回復」正常AT-MSCから放出されるnEVに対してマイクロアレイ 解析を行い,dA T-MSCの機能改善に作用する因子を同定する.加えて,今までのin vivo創傷治癒脳解析は,正常マウス(C57BL6)を用いたものであった. 2型DMモデルであるdb/dbマウスを用いることにより,より2型DM患者における合併症治療におけるEVの機能について詳細に解析を進める. 「幼若性EVを用いてMSCの若返りを誘導する」iAT-MSCと比較してeAT-MSCにおいて異なる遺伝子発現を示すキーとなる遺伝子(ROS等)について,その発現制御機構解析を行う.また,in vitroの系において,eAT-MSCの「若返り」がiEVの投与によって明らかとなることを確認した後に,マウスを用いたin vivoの系でその効果について解析を行う.
|