前年度に引き続き、細胞内の脂肪酸結合因子であるFABP5に着目し、各種リンパ腫細胞におけるFABP5の機能実験を継続的に行った。まず、FABP5が脂肪酸結合の他GPX4の生合成や代謝に関与しているかを確認するため、FABP5ノックアウト細胞のほか、FABP5ノックダウンおよびFABP5過剰発現株の樹立を試みた。具体的には、shFABP5およびFABP5過剰発現レンチウイルスベクターを作製し、悪性リンパ腫のなかでも最も頻度が高く、治療抵抗性の割合も億含まれるびまん大細胞型B細胞性リンパ腫細胞株であるMD901にインフェクションを行い、ウエスタンブロットにて発現の減弱および発現増強を確認した。この細胞を用いてGPX4の発現をタンパクレベルで確認したところ、FABP5の減弱によりGPX4の減弱が生じ、逆にFABP5を過剰発現されるとGPX4の発現が増強されることを見出した。興味深いことに、タンパクレベルにてGPX4が変化しているにもかかわらず、mRNAレベルでは明らかな変化が見られなかった。この現象は脂肪酸除去培地においてGPX4のタンパクレベルでの量が激減するにもかかわらず、mRNAレベルでは変化がみられなかったことに類似した変化であった。さらに、GPX1やTXNRD1などのセレノプロテインの発現もコントロールしていることが分かった。FABP5がGPX4をはじめとしたセレノプロテインを翻訳ないし翻訳後修飾により成業している可能性が考えられた。今後はこの現象が細胞外の脂肪酸を介在したものであるかどうかなどについて検討を行っていく予定である。
|