これまでの細胞実験において、FABP5がGPX4の発現量をタンパクレベルでコントロールしていることが確認された。この現象が細胞外の脂肪酸を介在したものであるかどうかなどについて確認・検討を行ったところ、細胞外の脂肪酸の影響はあってもごくわずかであることが明らかとなった。そこで、細胞外の液体構成物についてさらに検討を行ったところ、細胞外のセレンの濃度が細胞内のGPX4に大きく影響をおよぼすことが明らかとなった。これは同じグルタチオンペルオキシダーゼ群であるGPX1においても同様な現象が認められた。一方で同じくセレノプロテインであるTXNRD1においては細胞外のセレン量による変化はほとんど認められなかった。GPX4はFABP5をなどの脂肪酸調節因子によりその発現量が制御されるとともに、細胞外セレンによる影響も受けることが分かったが、この変化はセレン元素を必須とするセレノプロテインのなかでもグルタチオンペルオキシダーゼ群での影響が強く、TXNRD群ではその影響がほとんど認めないことから、セレノシステイン残基を用いたセレン元素の取り込みに関し、セレノプロテイン間で大きなメカニズムの違いが存在することが示唆された。今後は悪性リンパ腫をはじめとする悪性腫瘍のヒト組織サンプルを用いて、GPX4の発現とFABP5の発現の相関およびFABP5が再発・予後など臨床病理学的な因子にどのような影響を及ぼすか検討を行っていく予定である。
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