研究課題
①アミロイド線維形成を修飾する生体分子群の試験管実験による解析:大阪大学、新潟大学等との共同研究により、β2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイドーシスの危険因子として、これまで知られていた血中β2-m濃度の増加、長期血液透析歴に加え、血中アルブミン濃度の低下が第3の危険因子であることを、患者・健常者血清を用いた試験管実験により明らかにした。現在論文投稿中である。②プロテオーム解析のアミロイドーシス病態解明への応用:日本医科大学との共同研究により、心臓性突然死の剖検症例において、トランスサイレチンアミロイドーシスと全身性ALλアミロイドーシスが合併し、沈着場所を棲み分けながら心臓、肺を始めとする全身臓器に沈着していることを、免疫染色とプロテオーム解析を組み合わせて明らかにし、論文発表した。京都府立医科大学、熊本大学(研究分担者の植田)との共同研究により、トランスサイレチンアミロイドが大動脈弁へ沈着することにより、急速に進行する大動脈弁狭窄症を来した症例を論文報告した。これはトランスサイレチンアミロイドーシスが大動脈弁狭窄症の原因となり得ることを、免疫染色に加えプロテオーム解析を駆使して証明した世界で初めての報告である。また、プロテオーム解析データより、β2-mアミロイドーシスと共通する共存蛋白質が検出され、今後の研究に重要な示唆を与えた。③β2-mアミロイドーシス症例手術標本の収集:令和3年度に6症例の収集を計画したが、その目標を達成することができなかった。令和4年度以降、その収集に努める。
3: やや遅れている
上に述べたとおり、本研究と密接に関連する分野(プロテオーム解析、試験管実験を駆使した、アミロイド線維形成を修飾する生体分子群の解析)では十分な成果を得ることができた。一方で本研究課題の律速段階であるβ2-mアミロイドーシス症例手術標本の収集は遅れており、全体として「やや遅れている」と判断した。
①β2-mアミロイドーシス症例手術標本の収集:われわれは既に4症例を収集し、コンゴーレッド染色、抗β2-m染色など、基本的な解析を終えている。本研究では計10症例を収集し、以下に示すプロテオーム解析、および病理組織学的解析を実施する。② 手術標本のプロテオーム解析:①で収集した手術標本のブロックを熊本大学に送り、薄切、コンゴーレッド染色後、アミロイド沈着部位をレーザーマイクロダイセクション装置により切り取る。その後液体クロマトグラフィー・タンデムマススペクトロメトリーにより、β2-mを始めとする沈着蛋白質を網羅的に解析する。③ 共存蛋白質の試験管内β2-mアミロイド線維形成に及ぼす影響の解析:上記②でリストアップされたアミロイド共存蛋白質のβ2-mアミロイド線維形成に及ぼす影響を、われわれが独自に開発した試験管内実験系を駆使して多角的に解析する。アミロイド線維形成のキネティクスは、蛍光色素チオフラビンTを用いた分光蛍光定量法により解析する。④ 共存分子のアミロイド沈着組織における局在の解析:われわれは既に、4症例の手術標本を用いて、一群のプロテオグリカン(small leucine-rich proteoglycan: SLRP)に対する免疫染色を実施している。上記②でリストアップされたアミロイド共存蛋白質に対する抗体を用いて免疫染色を実施し、β2-mアミロイド内における共存蛋白質の局在を病理組織学的に解析する。⑤ データの統合と作業モデルの提案:上記で得られたデータを統合し、アミロイド線維形成を制御する細胞外生体分子環境の全貌を解明する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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