研究課題/領域番号 |
21K06968
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡崎 泰昌 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (30403489)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 中皮腫 / ラット動物モデル / マイクロサテライト |
研究実績の概要 |
ヒト悪性中皮腫で高頻度に見られる遺伝子異常は、CDKN2A/2B(Cyclin-dependent kinase inhibitor 2A/2B)の欠失、NF2(neurofibromatosis type 2, merlin)の欠失や遺伝子変異、BAP1(BRCA1-associated protein) 遺伝子変異が知られている。報告者が所属する研究室で行ったaCGH(array-based comparative genomic hybridization)によるラット悪性腹膜中皮腫でもCdkn2a/2bはゲノム欠失が高頻度に起き、Nf2もゲノム欠失が見られた。一方、Bap1の欠失は明らかに少なかった。ヒト悪性中皮腫ではBap1は遺伝子変異や小領域の欠失による機能喪失がしばしばみられ、良質な抗体が市販されていることもあり、FISH(fluorescent in situ hybridization)より免疫染色による蛋白分子の解析が施行されている。一方、CDKN2A/2B領域の欠失の有無は、免疫染色よりもFISHが推奨されている。そのため、Cdkn2a/2b領域が存在する5番染色体や、Nf2領域が存在する14番染色体を中心にPCR法によるF1 hybrid rat [Brown-Norway, Fischer344 (F344)] 由来悪性腹膜中皮腫のマイクロサテライト解析を行った。クロシドライト、クリソタイル、トレモライトといったアスベスト線維や多層カーボンナノチューブにより異なるゲノム欠失パターンが見られたが、中皮腫を自然発症しやすいF344由来母ゲノム欠失への偏りは明瞭ではなく、検体を追加する予定である。また、鉄化合物など中皮腫発がんを来す物質による中皮腫検体も追加検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PCRの条件検討は行っており、これから多くの染色体についてマイクロサテライトマーカー解析を行い、中皮腫との関連があまり知られていない染色体部位においても、LOHや偏りの有無について検討を行う。
|
今後の研究の推進方策 |
F1ラット由来腹膜中皮腫の検体を追加することで、ラット種によるLOHを生じる部位の偏りの有無や、発がんの原因となるアスベスト線維の種類やカーボンナノチューブの種類によりLOHの偏りを生じるかどうかについて、より詳細な検討を行う。また、分子マーカーの発現の有無を免疫染色により解析し、パラフィン包埋薄切切片からDNAを抽出する。このDNAを用い、Cdkn2a/2b領域の欠損の有無やNf2領域のLOHの有無をPCRにより解析する条件検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
マイクロサテライト解析に使用するPCR酵素やアガロースは汎用品より高価であるため、節約を考えて使用したため次年度使用が生じた。令和五年度はPCR酵素やアガロースを主に購入する予定である。
|