研究実績の概要 |
ヒト悪性中皮腫で高頻度に見られる遺伝子異常は、CDKN2A/2B(Cyclin-dependent kinase inhibitor 2A/2B)の欠失、NF2(neurofibromatosis type 2, merlin)の欠失や遺伝子変異、BAP1(BRCA1-associated protein) 遺伝子変異が知られている。報告者が所属する研究室で行ったaCGH(array-based comparative genomic hybridization)によるラット悪性腹膜中皮腫でもCdkn2a/2bはゲノム欠失が高頻度に起き、Nf2もゲノム欠失が見られた。一方、Bap1の欠失は明らかに少なかった。ヒト悪性中皮腫ではBap1は遺伝子変異や小領域の欠失による機能喪失がしばしばみられ、良質な抗体が市販されていることもあり、FISH(fluorescent in situ hybridization)より免疫染色による蛋白分子の解析が施行されている。一方、CDKN2A/2B領域の欠失の有無は、免疫染色よりもFISHが推奨されている。その ため、Cdkn2a/2b領域が存在する5番染色体や、Nf2領域が存在する14番染色体を中心にPCR法によるF1 hybrid rat [Brown-Norway, Fischer344 (F344)] 由来悪性 腹膜中皮腫のマイクロサテライト解析を行った。クロシドライト、クリソタイル、トレモライトといったアスベスト線維や多層カーボンナノチューブにより異なるゲノム欠失パターンが見られたが、Nf2領域はLOHが多かったが、父親由来と母親由来のゲノム欠失に一定のパターンは見られなかった。
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