研究課題
ブレオマイシン(BLM)誘発強皮症モデルマウスによるHMGB1ペプチドの効果について検証した。治療効果を確認するため、投与量、投与回数による評価を行った。1回100μgのBLMを週3回8週間投与し、後半の4週間HMGB1の治療をあわせて行う方法と、100μgのBLMを週3回4週間投与後中止し、その後4週間治療を行う方法、100μgのBLMを週5回2週間その後治療を2週間行う方法にて確認したが効果はみられなかった。予防効果を確認する実験として、100μgのBLMを週3回4週間投与、同時に治療を4週間行った群、1回50μg、10μgのBLMを週3回4週間投与、同時に治療を開始し8週間継続した群について検討したが予防効果はみられていない。皮膚の病理組織による測定以外に、ヒドロキシプロリンアッセイやqPCRでの評価もあわせて行なったが、治療群と非治療群間で有意差は認められていない。またBLM誘発性強皮症モデルマウスにおいて肺病変が誘発されることを確認し、肺病変をsingle cell RNA sequenceで違いを検討している。BLM誘発性強皮症モデルマウスの肺組織を回収しPDGFRα陽性細胞のサブクラスター解析を行った。Npnt+細胞とPi16+細胞が主要な細胞集団であった。PBS投与群と、ブレオマイシン投与群で、Npnt+細胞のDEG解析で有意に上昇したのが668、低下したものが580確認された。これらの遺伝子からGene ontologyを検討したところ、extracellular matrix organization、extracellular structure organization、collagen metabolic process、collagen fibril organizationなど線維化の機序に関わる遺伝子群の発現が亢進していることが確認できた。
3: やや遅れている
BLM誘発強皮症モデルマウスによるHMGB1ペプチドの治療効果を確認するため、投与量、投与回数による評価を行った。HMGB1ペプチドによる治療効果を確認するため、BLM投与を先行させ、その後にHMGB1ペプチドによる治療を行う実験系で行ったが、治療効果は確認できなかった。そのため、BLMとHMGB1による治療を同時に開始するHMGB1の予防効果を確認する実験を行ったが、同じく予防効果もこれまでのところ確認できていない。
BLM誘発強皮症モデルマウスによるHMGB1ペプチドの治療もしくは予防効果については、これまでは静脈注射によりHMGB1ペプチドを投与していたが、直接皮下に接種するなど投与方法を変更すること、さらにBLM投与回数および投与期間をさらに短縮して検討する。BLM誘発性強皮症モデルマウスにおいて皮膚病変および肺病変が誘発されることを確認した。皮膚病変は病変部からは解析に十分な細胞数が得られず行えなかったが、肺病変における変化をsingle cell RNA sequenceでの検討を引き続き行い、解析を進める。single cell RNA sequenceによるBLM誘発強皮症モデルマウスにおける肺病変の病態解明を目指し、DEG解析から得られたGene ontologyの結果からどのような機序で肺病変を誘導しているのかをさらに詳細に検討する。
BLM誘発強皮症モデルマウスによるHMGB1ペプチドの治療効果および予防効果を確認する実験を行ったが、治療効果・予防効果ともにこれまでのところ確認できていない。そのため実験を予定していたように進められていないこと、また実験内容を変更する必要が生じたことにより次年度使用額が生じた。次年度以降にHMGB1ペプチドの投与方法の修正および投与経路の修正を行いさらに実験をすすめることと、またsingle cell RNA sequenceによる解析をもとにBLM誘発強皮症モデルマウスにおいてどのような機序で肺病変を誘導しているのかをさらに詳細に検討することを予定している。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 2件)
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