研究課題/領域番号 |
21K06972
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
横平 政直 香川大学, 医学部, 教授 (70403780)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 中皮腫 / 胸膜 / 胸腔内投与 / TISMO |
研究実績の概要 |
2021年度は、実験1(A/J雌性マウスによる胸膜悪性中皮腫発症実験(1年および2年)を開始した。実験1と2で使用予定であったCrocidoliteについて、販売経路や法制上の問題から入手困難であり、本学でのCrocidoliteを用いた実験の実施は困難と結論した。これまでの我々の実験では、TISMOはアスベストに似た形状を有する針状粒子であるTISMO胸腔内投与群で肺胸膜の肥厚(プラーク)が見られている。以上から、Crocidolite群がなくてもTISMO群があれば、今回の実験の目的(針状粒子による胸膜悪性中皮腫を高率に発症する世界初の動物モデルの確立)は十分達せられると考えられた。2021/11/15に、7週齢のA/Jマウス(雌性)を用い、TISMOをそれぞれ0.3mgおよび0.03mgの用量(前回実験の1/10および1/100の用量)で胸腔内投与した。その後、1回/月の体重測定を継続しているが、極端な体重減少等の異常所見は見られていない。現在も動物は飼育中であり、順調に進行している。 今後、2022年度について、実験1(A/J雌性マウスによる胸膜悪性中皮腫発症実験(1年および2年))が進行中の予定である。このうち、1年目である2022/11/15ころに屠殺剖検を行い、病理組織学的検索を行う。さらに、実験2(PFDの胸膜肥厚抑制実験(12週))を開始する。12週後に屠殺剖検、病理組織学的解析を行い胸膜肥厚の抑制効果を検索する。 2023年度は実験1および実験2が終了予定である。実験1では胸膜悪性中皮腫の発生および胸膜プラーク中の中皮細胞の変化について1年目と2年目を比較し検討する。実験2によって、PFDのTISMO誘発胸膜プラークに対する抑制効果を明らかにする予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、実験1(A/J雌性マウスによる胸膜悪性中皮腫発症実験(1年および2年)を開始した。実験1と2で使用予定であったCrocidoliteの入手について、販売経路が限られていることや法制上の問題から非常に難しく、情報収集と手続きに時間を要した。結局、本学でのCrocidoliteを用いた実験の実施は困難と結論した。Crocidolite群は陽性コントロールとして設定していた。これまで、動物の胸膜中皮腫モデルに関する研究を行ってきており、我々は、被験物質を直接胸膜中皮細胞に安定的に暴露させるため、開胸下に被験物質を胸腔内に投与する方法を開発した。マウスの左胸腔内に同一の成分でもサイズや形状の異なる3つの微粒子(TiO2 micro size particle、TiO2 nano size particle、TISMO)を投与した結果、21週後に針状のTISMO投与群のみ肺胸膜の肥厚(プラーク)が見られた。TISMOはアスベストに似た形状を有する針状粒子であり、胸膜悪性中皮腫の発生原因も危惧される。以上から、Crocidolite群がなくてもTISMO群があれば、今回の実験の目的(針状粒子による胸膜悪性中皮腫を高率に発症する世界初の動物モデルの確立)は十分達せられると考えられた。2021/11/15に、7週齢のA/Jマウス(雌性)を用い、TISMOをそれぞれ0.3mgおよび0.03mgの用量(前回実験の1/10および1/100の用量)で胸腔内投与した。1回/月の体重測定を継続しているが、極端な体重減少等の異常所見は見られていない。現在も動物は飼育中であり、順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度について、実験1(A/J雌性マウスによる胸膜悪性中皮腫発症実験(1年および2年))が進行中の予定である。このうち、1年目である2022/11/15ころに屠殺剖検を行い、肺、肝臓、腎臓を摘出する。病理組織切片を作成し組織学的および電子顕微鏡での形態 的解析を行い胸膜の腫瘍性変化を評価する。胸膜に対して免疫染色および鉄染色の検討を行う予定である。さらに実験2(PFDの胸膜肥厚抑制実験(12週))を開始する。7週齢のA/Jマウス(雌性)40匹を用い、1~3群にはTISMOをそれぞれ0.3mgの用量で実験開始時に胸腔内投与する。PFDのlow dose群はヒトの常用量相当の144ppmを、high dose群はlow dose群の10倍の1440ppmを混餌投与する(基礎食はOriental MF)。12週後に屠殺剖検し、肺、肝、腎を摘出し、病理組織学的解析を行い胸膜肥厚の抑制効果を検索する。 2023年度は実験1および実験2が終了予定である。実験1では胸膜悪性中皮腫の発生および胸膜プラーク中の中皮細胞の変化について、形態、タンパク発現、酸化的DNA損傷の変化について1年目と2年目を比較し検討する。実験2によって、PFDのTISMO誘発胸膜プラークに対する抑制効果および形態、タンパク発現、酸化的DNA損傷についての関連を明らかにする予定である。
|