研究課題/領域番号 |
21K06985
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
新澤 直明 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (10583015)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | マラリア原虫 / RNA結合タンパク質 / TRIBE法 / 局在解析 |
研究実績の概要 |
マラリア原虫のステージ形成に必要な秩序立ったタンパク質発現には、発現遺伝子群の転写活性化に続くRNAの翻訳、安定化・分解などの転写後調節機構が必須である。本研究では、各ステージ形成に共通する転写後調節機構の基本原理を明らかにするため、原虫生活環全体にファミリー分子が存在し、マラリア原虫種間に高い保存性を持つTZFファミリーに着目した。新規標的RNA同定法と革新的ゲノム編集法の2つを基盤技術として、TZFファミリーの機能を明らかにすることで、各ステージ形成におけるTZFファミリーによる転写後調節機構の共通原理の解明を目指す。本年度は、生殖母体期TZFの標的RNA解析を試みた。昨年度に作出した生殖母体期のTZFのADAR融合遺伝子発現株(TZF-G::ADAR)を用いたTRIBE法を実施した。バイオインフォマティクス解析によってmRNAが編集された遺伝子を解析し、標的RNAのリストアップを試みた。ADARのみを強制発現させたコントロール株においても、多数のmRNAに編集が観察された。TZF-G::ADARとコントロール株における編集mRNAに明確な差は検出することはできなかった。一方、TZF-GのGFP融合株における詳細な局在解析を行った結果、雄雌両方の生殖母体の細胞質においてドット状に発現することが明らかになった。また、受精後に発現するTZF-G3に関してもGFP融合株における局在解析を行った結果、同様に細胞質におけるドット状の発現パターンを示した。このドット状の発現パターンは、P-bodyやストレス小胞のような無膜オルガネラであることが予想され、TZFファミリーは翻訳抑制複合体と関わることが予想された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TRIBE法は、非特異的なmRNA編集が多数起こり、生殖母体期のTZFを標的としたTRIBE法では十分に標的RNAの解析ができなかった。TRIBE法は利用できるRNA結合タンパク質に選択性があることが懸念された。本研究の主題であるTZFの標的RNA同定は、計画通りには進んでいない。
|
今後の研究の推進方策 |
TZF-GのTRIBE法は困難であることが明らかになった。TRIBE法とは異なる手法による標的RNA同定法(eCLIP)の開発に取り組む。さらに、熱帯熱マラリア原虫での無性生殖期でのTZFファミリーのTRIBE法が可能かどうかを検討を行っていく。 また、TZFファミリーは無膜オルガネラへの局在を示したことから、近位依存性ビオチン標識法による相互作用タンパク質の同定から、機能解析を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
他の研究費により、消耗品費が抑えられたため。
|