研究課題/領域番号 |
21K06990
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
長岡 ひかる 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト講師 (10757222)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | GAMA / 赤血球期ステージ / 増殖阻害活性 / 新規ワクチン候補抗原 / モノクローナル抗体 |
研究実績の概要 |
マラリアワクチン開発は喫緊の課題でのため、これまでに我々はコムギ無細胞系を基盤に、新規赤血球期ワクチン候補分子の同定やヒトタンパク質ライブラリーによる 赤血球レセプター探索を精力的に行ってきた。本研究では、近年見出した赤血球期ワクチン候補抗原であるGPI-anchored merozoite antigen (GAMA)の赤血球侵 入における分子機能を明らかにするため、1)ヒト赤血球表面タンパク質ライブラリーによるGAMA相互作用分子の探索、 2)抗GAMA8モノクローナル抗体 (mAb)の作製、 3)mAbによるタンパク質相互作用ならびに原虫増殖に対する阻害活性の測定を行い、GAMAの分子機能に必須なタンパク質相互作用を明らかにす る。2021年度は、コムギ無細胞系を用いてGSTタグ付きGAMA分子およびヒト赤血球タンパク質ライブラリーを合成し、アルファスクリーン法を用いて赤血球側相互作用分子を探索、複数個の赤血球側相互作用分子を発見した。さらにGAMA8抗原をマウスへ免疫し、抗血清の原虫抗原 への反応性を確認した。 2022年度はウサギに免疫して得た抗体からモノクローナル抗体を複数個作出し、ウエスタンブロットとIFAを用いて抗血清の原虫抗原 への反応性を確認、作成したモノクローナル抗体の原虫への増殖阻害活性を測定するため培養熱帯熱マラリア原虫に対し増殖阻害活性を測定した。最終年度は数段階の濃度を用いて増殖阻害活性を測定するとともに、作製したmAbがアルファスクリーン法で同定した赤血球レセプター分子とGAMA8の相互作用をどの程度阻害するのか、確立済みの Biacoreを用いた結合阻害活性測定系を用いて判定する。これ により、GAMA8-赤血球レセプターの相互作用を特異的に阻害できるmAbと、阻害しない 抗GAMA8 mAbを各複数クローン樹立する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度はコムギ無細胞タンパク質合成系を用いてGSTタグ付きGAMAタンパク質および赤血球側タンパク質ライブラリーの発現を行いSDS-PAGEもしくはウェスタ ンブロッティングを用いて発現の確認を行なった。さらにアルファスクリーンを用いて複数個の相互作用分子を発見した。GAMA8抗原に対するマウスモノクロー ナル抗体の作成に関しては、GAMA8タンパク質をマウスへと免疫し、免疫後に得られた血清を用いてウェスタンブロットおよび間接蛍光抗体法を用いて原虫への 反応性を確認した。 2022年度はGAMA8抗原に対するラビットモノクロー ナル抗体を新たに作成し免疫後に得られた血清を用いてウェスタンブロットおよび間接蛍光抗体法を用いて原虫への 反応性を確認した。さらに反応が確認された抗体を用いて培養熱帯熱マラリア原虫に対し増殖阻害活性を測定した。また2021年度にアルファスクリーンで見つかっ たタンパク質の生化学的な解析をBIacoreを用いて行うと同時にヒト赤血球膜タンパク質を用いた当該タンパク質複合体の免疫沈降を試みた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に当初最終年度に実施を計画していた培養熱帯熱マラリア原虫に対する増殖阻害活性を測定し、増殖を阻害する可能性のあるモノクローナル抗体を複数個見出した。そこで2023年度はこれまでに見つけたタンパク質相互作用をBiacoreを用いてmAbとGAMAがどの程度強く結合するのかについて検証した上で、タンパク質間の相互作用を作出したモノクローナル抗体を用いて阻害するか生化学的に解析する。さらに当該モノクローナル抗体の濃度を段階的に変化させることによってタンパク質間阻害作用にどのような影響を及ぼすか検証する予定である。最終的にGAMAと相互作用するタンパク質間の相互作用を特異的に阻害できるmAbと、比較対照としてタンパク質相互作用は阻害しないがGAMAと結合するmAbを複数分離する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に行われた学会へ参加するために使用した旅費精算の計算を誤り残額が生じたため、次年度に繰り越した。最終年度の経費と合わせ予定している研究活動および学会発表に参加するために使用する予定である。
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