研究課題/領域番号 |
21K06993
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
成瀬 妙子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (80422476)
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研究分担者 |
平山 謙二 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 教授 (60189868)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | グライコフォリン / マラリア原虫リガンド / 赤血球侵入 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
グライコフォリン;Glycophorin(GYP)分子群は赤血球表面に発現し、MN, Ss, Gerbich, Dantu等の古典的血液型を決定している。最近、GYP分子群は熱帯熱マラリア原虫の赤血球侵入に関わるレセプターとして機能していることが報告された。本研究ではGYP分子群の多型(血液型)がマラリア原虫の赤血球侵入にいかなる影響を与えるのかについて答えを得るために、2つのアプローチを試みる。1)流行地の集団を対象とした熱帯熱マラリア重症度と血液型との相関解析、2)GYP分子をコードする遺伝子の各アレルの遺伝子導入細胞(赤血球)への培養マラリア原虫の侵入効率の観察。上記の解析により、マラリア重症化に及ぼすGYP多型の意義が明確となり、マラリア死に直結する重症マラリアの予防治療法の開発に資することを目的とする。 令和5年度は、熱帯熱マラリア患者のうち、重症マラリア患者50名、無症候性マラリア患者100名、および有熱マラリア患者100名より抽出した保存ゲノミックDNA中に存在する熱帯熱マラリア原虫(Pf)由来DNAを対象として、原虫上に存在するGYPリガンドであるEba-175, Eba-181, Eba-140, Ebl-1をコードする遺伝子領域の多型について、次世代シーケンサー(NGS)にて各遺伝子の塩基配列を解析した。得られた塩基配列情報から、遺伝子塩基配列多型について解析を進め、現在3つの遺伝子領域で複数の新規塩基配列多型を同定した。 その一方で、検出結果は患者由来のマラリア原虫数に影響を受けていることも明らかとなり、検出法のさらなる改良と、検出できた多型についても確認解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に遅れが生じていた、宿主赤血球レセプターであるヒトGYPレセプターに対応する熱帯熱マラリア原虫リガンド多型については、GYP遺伝子同様に次世代シーケンサーによる解析を進めたが、今年度に作成した広範囲をカバーする改良版プライマーセットは、リファレンスである培養株3D7を用いた検討では問題なく均一な増幅結果が得られたが、実際に患者250名より抽出した保存DNAを用いた解析では、一部のサンプルでは得られたリード数やリシーケンスの際のマッピングレートが低かった。この事から各サンプル由来の増幅効率は血液中の原虫数に依存すると考え、増幅効率との関連を精査したところ、信頼可能なリード数を得るためにはおおよそ1,000コピー程度が必要であることが分かった。しかしながら、低リード数を示す検体にはコピー数20,000程度と十分であるものも含まれていたことから、今後はDNA溶液中に存在するマラリア原虫ゲノムのみを高効率に増幅可能な選択的全ゲノム増幅法とnasted-PCRの手法を併用など、追加実験の必要性が生じた。さらに、解析に成功したサンプルの結果についても確認の必要性が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
宿主側レセプター側であるヒトGYP遺伝子については、新規の非同義置換多型や一般集団と比較して各群に特徴的な多型が検出されていることから、対応する熱帯熱マラリア原虫リガンド多型について早急に多型情報を明らかにし、マラリア重症度との関連を明らかにする手掛かりとしたい。マラリア原虫ゲノムのみを高効率に増幅可能な選択的全ゲノム増幅法とnasted-PCRの手法を併用し、出来るだけ速やかにGYPレセプター/EBAリガンドペアについて解析を解析を完了したいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大の影響で、令和4年度実施予定のシーケンスによるジェノタイピング実施計画の一部が令和5年度に延期され、実験予定が順次スライドしている。これらの予算は令和6年度実施予定の試薬等購入、シーケンス費用、成果発表のための費用に充当する予定である。
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