研究課題/領域番号 |
21K06996
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
坪川 大悟 北里大学, 医学部, 助教 (30714901)
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研究分担者 |
市川 尊文 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (30245378)
佐藤 雅 北里大学, 医学部, 講師 (40611843)
川上 文貴 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (50511896)
川島 麗 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (70392389)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 蠕虫 / RAGE / 宿主応答 / 腸管免疫 |
研究実績の概要 |
終末糖化産物受容体(RAGE)は終末糖化産物の受容体として同定されたパターン認識受容体で、哺乳動物の皮膚や肺組織の平滑筋細胞や内皮細胞、マクロファージなどの免疫細胞に発現し、S100蛋白などのダメージ関連分子パターンを認識することで、サイトカインや接着分子の発現亢進を誘導し炎症反応を引き起こす。消化管寄生線虫は宿主腸管粘膜において、タフト細胞からのIL-25産生、自然リンパ球からのIL-13産生、杯細胞の過形成により排除される。2022年度までに、消化管寄生線虫Nippostrongylus brasiliensis感染系を用い、N. brasiliensisはRAGEを介したプロスタグランジンD2(PGD2)産生により杯細胞過形成を抑制することで、腸管粘膜寄生を有利に進める可能性を示唆するデータを得た。2023年度はさらに以下の実証実験を行った。 C57BL/6J野生型(Wt)とRAGE欠損(RAGE-/-)マウスそれぞれに、N. brasiliensis感染型幼虫1,000隻の皮下感染を行った。虫体が成熟する感染7日目の小腸粘膜でのqPCR解析で、Wtと比べRAGE-/-マウス小腸でタフト細胞が発現するIL-25の有意な発現上昇が認められた。シクロオキシゲナーゼやPGD2合成酵素をqPCR解析すると、Wtで感染後の有意な発現上昇が認められたが、RAGE-/-マウスでは認められなかった。N. brasiliensis 感染RAGE-/-マウスにPGD2を腹腔内投与すると、非投与群で認められる杯細胞やタフト細胞数の増加が抑制された。以上より、N. brasiliensisはRAGEを介したPGD2産生による杯細胞過形成の抑制機構を利用し、腸管粘膜寄生を有利にすることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、寄生蠕虫の体内移行に関与する分泌蛋白であるS100様分子の、宿主炎症反応の発端となるシグナルを伝達するパターン認識受容体(PRRs)を介する宿主免疫制御機構を明らかにすることを目的としている。本研究の目的達成のためには、in vivo実験系からのアプローチが必要となる。2021年度は「Venestatin」のRAGEシグナルの制御によるアレルギー性喘息病態抑制効果を明らかにした。2022・2023年度で N. brasiliensisのRAGEを介したPGD2産生による腸管2型免疫応答(杯細胞過形成)の抑制機構を明らかにした。 従って、「おおむね順調に進展している」との評価をした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、N. brasiliensisのRAGEを介したPGD2産生による杯細胞過形成の抑制機構を明らかにした。今後は、マウス肺、小腸におけるRAGE発現量をウエスタンブロッティング法により検討し、RAGE発現細胞を免疫組織化学染色法により同定する。さらに、N. brasiliensis由来PRRsリカンド投与による炎症応答や蠕虫感染による2型免疫応答に与える影響など宿主内におけるS100様分子の役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、学会・研究会への不参加により、予定していた旅費の支出が無くなった。以上の理由から、当初予定していた使用金額よりも少ない支出となった。次年度使用計画については、本研究では、種々の遺伝子及び蛋白解析を日常的に実施することから、試薬類はプライマー作製、抗体、生化学・蛋白質合成試薬などの購入費として予定している。さらには、論文作成にあたり、英文校正費や掲載費に使用することを予定している。
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