研究課題
令和4年度は黄色ブドウ球菌の接着因子の1種であるClumping factor Aのフィブリノーゲン結合領域(ClfA40-559)をコードする組換えプラスミドでトランスフォーメンションしたE. coli DH5α株を用いてClfA40-559を大量精製した。ClfA40-559を抗原とするワクチンを接種するために、精製したClfA40-559をAlumアジュバントとともにC57BL/6マウスに2週間おきに3回皮下投与した。毒素性ショック症候群毒素-1(TSST-1)がワクチン効果にどのような影響を与えるかを調べるために、最終ブースター接種の12週間後にスーパー抗原を産生能を欠くS. aureus RN4220株(RN4220)、またはRN4220株にTSST-1遺伝子を導入し過剰発現させた(RN4220/tst)を全身感染させ生存率、脾臓と腎臓の生菌数を調べワクチンの感染防御効果を検討した。しかしワクチン接種したRN4220感染群マウス、RN4220/tst感染群マウスの生存率、生菌数は非ワクチン接種群マウスと有意差はなく、ClfA40-559ワクチンの効果は見られなかった。文献を検索したところ、RN4220はClfA遺伝子に点変異を有し正常なClfAを欠損していることが示唆されており、これがワクチン効果が得られなかった原因と考えられた。そこで、マウスにRN4220またはRN4220/tstを感染させることにより感染後免疫を誘導する方法に変更した。現在、初感染の12週間後にRN4220またはRN4220/tstを再感染させ、生存率や脾臓、腎臓中の生菌数、脾臓中のIL-17、IFN-γ、TNF-αなどのサイトカインの測定、脾臓と腎臓の病理組織学的解析を行い、黄色ブドウ球菌感染後免疫に対するTSST-1の影響を検討している。
3: やや遅れている
黄色ブドウ球菌RN4220、RN4220/tst全身感染に対するClfAワクチンの有効性がみられず、RN4220またはRN4220/tstを感染させることにより獲得免疫を誘導する方法に変更したことがやや遅れた理由である。ClfAワクチンの感染防御効果においてIL-17が重要な役割を果たすことが報告されたいるが、感染後免疫におけるIL-17の役割は不明である。そこでRN4220またはRN4220/tstで誘導した感染後免疫におけるIL-17の役割をin vitroでまたはin vivoで検討することとした。また、この実験結果を考慮し、改めてIL-17レポーターマウスの購入を検討することとした。
マウスにRN4220またはRN4220/tstを感染させ誘導した感染後免疫に対しTSST-1がどのような影響を与えるかを明らかにするために、RN4220またはRN4220/tst再感染後の生存率、臓器中の生菌数を調べる。感染で得られた防御免疫にどのようなサイトカインが関与し、TSST-1によってどのような影響を受けるのかを検討するために、再感染マウスの脾臓におけるサイトカインmRNA発現などを解析する。また、感染後免疫に対するTSST-1の影響が補助刺激受容体を介するかを調べるために、初感染後マウスの脾細胞浮遊液にCTLA4、4-1BB、PD-1等の補助刺激受容体に対するアンタゴニスト抗体や阻害剤を加えた後、TSST-1の存在下で抗原刺激し、サイトカイン産生を解析する。
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