研究課題/領域番号 |
21K07002
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小倉 康平 金沢大学, 新学術創成研究機構, 助教 (00586612)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レンサ球菌 / 溶血性レンサ球菌 / 病原因子 / 腎臓 / 皮膚 |
研究実績の概要 |
高い溶血性を示すレンサ球菌Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilisは、高病原性菌として知られるStreptococcus pyogenes と同様に症例数が近年増大しており、発症後死亡あるいは予後不良となることが非常に多い。これまでの研究から、Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilisのみが有する宿主障害性・病原因子が明らかにされつつあるが、加齢・基礎疾患と重症化とを直接的に結びつける知見は未だ得られていない。本研究は、加齢・基礎疾患に起因する肝障害状態ならびにそれに伴う皮膚生理機能低下に着目し、脆弱なマウス皮膚に感染させたSDSEが宿主体内で示す挙動を明らかにすることを目的とする。 本研究は、病原性レンサ球菌Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilisの感染メカニズムについて、肝臓・皮膚・腎臓の3臓器の病態・基礎疾患保有が、全身性の感染症の発症ならびに重症化に関連していることに着目した研究である。令和3年度においては、特に国内で分離頻度が高いタイプのStreptococcus dysgalactiae subsp. equisimilisについて、その特性を解析した。Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilisが産生するある病原因子が腎臓への集積に直接的に関与することを示唆する予備的データを得た。本病原因子の遺伝子を欠失させた変異株を作製した。今後は、腎臓への集積が本遺伝子欠損によって変化するかについて解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilisが原因となる重篤な感染症発症機構について、「①易感染状態皮膚上でどのような挙動を示すのか?」「②皮膚感染に直接的に関わるSDSE新規病原因子は存在するのか?」「③皮膚感染後SDSEは体内でどのような挙動を示すのか?」の3つそれぞれについて分け、各種マウスモデルや細胞株を用いて解析し、それらの知見を併せることでSDSE重症化の体系を明らかにすることを目的としている。 研究①については、易感染状態皮膚をマウスを用いて作るために、創部形成などの条件を検討する予備的解析を進めることができた。研究②については、「研究実績の概要」欄に記したとおり、体内への感染に関与する病原因子を見出している。 以上の研究から、現在までの研究は概ね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画から大きな変更点はなく、順調に進展している。来年度以降についても、引き続き計画書の通り研究を進めていく。レンサ球菌は多くの病原因子を産生することが知られているものの、Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilisには機能未知の遺伝子が多く存在し、その中には本菌固有の病原因子をコードするものが含まれている可能性が高い。新規病原因子についても、引き続き探索を進めていく。また本研究の特色である肝臓・皮膚・腎臓の連関については、皮膚から腎臓への侵入感染機構、ならびに肝臓疾患が皮膚感染に与える影響について、取り組んでいく予定である。
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