研究課題
令和4年度に行った実験の結果、IMP型βラクタマーゼにおいては、フレキシブルループ(L1)と呼ばれる、基質結合に関与するループ部分の柔軟性が高い酵素ほどメロペネムに対する特異性が高いことを明らかにした。また、IMP-6にイミペネム、メロペネムを結合させた状態の構造を分子動力学的シミュレーションにより予測し、基質のR2側鎖が大きいいメロペネムの方が、L1の動きが大きくないと基質が結合・脱離しにくいことを明らかにした。これを受けて令和5年度では、IMP-6、IMP-1にメロペネム、あるいはイミペネムが結合した状態の構造を解析し、構造学的な実証を試みた。IMP型βラクタマーゼの結晶構造解析を行う場合の問題点として、結晶格子中に複数のタンパク質が存在する場合、L1を含めた基質結合部位の構造は結晶中のパッキングに影響されることが知られている。そこで基質との共結晶については、前年度に構造を解析したIMP-6、IMP-1と同じ空間群を持つ結晶を得ることを目的とした。Hampton Research社製の結晶化条件検索キットを用いて検索を行ったところ、IMP-6とメロペネムとの共結晶について、50μM zinc sulfateを含む5 mM HEPES-Na pH7.3に溶解した15 mg/ml IMP-6に対して20 mMのメロペネムを添加した溶液と、24%(w/v)ポリエチレングリコールモノメチルエーテル550溶液(0.1 M sodium citrate pH5.0)を混合して15℃で結晶化すると、約2週間で0.2 mm角の柱状結晶が得られた。この結晶は基質非結合状態のIMP-6と同一の空間群、格子定数を有し、分解能1.8 Åを超える良好な反射を与えた。今後この結晶をSPring-8でのデータ収集に供し、どのように基質が結合しているか、L1の構造と柔軟性とについて実証する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
One Health
巻: 16 ページ: 100524
10.1016/j.onehlt.2023.100524
Open Forum Infect Dis
巻: 10 ページ: ofad634
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