研究課題
2023年度は、胆管ステント内腔表面におけるバイオフィルムの単離を行い、各種条件下でバイオフィルム形成能を評価した。まず、胆管ステントを1%グルタルアルデヒドで固定し、蛍光色素(WGA-Alexa647、FM1-43、DAPI)で染色した。バイオフィルム透明化法を用いてバイオフィルムを透明化後、共焦点レーザー顕微鏡(LSM880)で観察した。菌の同定はA.血液寒天培地での培養、B.グラム染色、C.シーケンス解析で行った。その結果、腸球菌(5/8検体)、バシラス属細菌(6/8検体)が高頻度に分離された。メタゲノム解析でも同様に腸球菌(5/8検体)が高頻度に分離された。このうち単離可能であった腸球菌の各株を用いて、以下2種類の環境においてバイオフィルム形成能の評価を行った。第一に、1%Glucoseおよび3%NaCl添加BHI培地において、全15株中4株において、Glucose添加によりバイオフィルム形成が有意に促進された。NaCl添加群には有意な変化はなかった。この4株において、二次胆汁酸であるDCA・LCA添加下でバイオフィルム形成能を評価したところ、うち2株において菌の凝集がみられバイオフィルム形成が低下した一方、残る2株ではバイオフィルム形成が促進していた。胆汁酸添加による菌の形態変化を観察するため、1%Glucose添加BHI培地にて培養し、走査型共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、LCA添加によりバイオフィルム形成の促進に加え、菌の連鎖が促進されていることが確認された。胆管ステント内部でも同様に、多くの細菌が胆汁酸により生育できない一方で、一部の菌株ではバイオフィルムが促進され、これらが胆管ステント閉塞の一因となっている可能性が示唆された。