研究課題/領域番号 |
21K07023
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野澤 孝志 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10598858)
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研究分担者 |
相川 知宏 京都大学, 医学研究科, 助教 (70725499)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | A群レンサ球菌 / NAD-glycohydrolase / Streptolysin O |
研究実績の概要 |
A群レンサ球菌は、ヒトに咽頭炎や扁桃炎、劇症型A群レンサ球菌感染症を引き起こす病原性細菌である。近年、世界的に流行しているA群レンサ球菌株(M89-Clade-3株)のマルチオミクス解析の結果、分泌毒素であるNga (NAD-glycohydrolase)の発現量が上昇していることが明らかになっている。当該年度では、このNgaと相互作用する宿主因子の探索、同定を行った。天然のNgaタンパク質はNADase活性により大腸菌や培養細胞等で発現させることができないことから、error-prone PCRにより、NADase活性を持たずに宿主制御機能を保持した変異体Nga-mut1を用いて解析を行った。GFP-Nga-mut1をヒト上皮細胞に発現させ、GFP-Trapにより生成し、ショットガンプロてオミクス解析により、共沈タンパク質を同定した。得られた因子については、組み換えタンパク質を作成して、相互作用解析を行った。同定できた因子に関しては、今後、ノックダウン・ノックアウト解析等を進めて行くことで、Ngaを介した宿主制御機構を明らかにして行く予定である。 また、Ngaによる宿主ゴルジ体断片化機能のメカニズムを調べるため、ゲノムワイドなCRISPRスクリーニングに着手した。現在、複数のsgRNAライブラリーを作成中である。 今回の成果により、細菌毒素NgaがNADase活性非依存的に宿主制御に関わること、そしてその標的因子候補を同定できたことは、A群レンサ球菌の病原性発揮機構を理解する上で非常に重要な知見となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の予定であったNgaの相互作用因子の同定を行い、複数の相互作用宿主因子を同定した。その中には、これまで観察されていたNgaによる宿主への影響(ゴルジ体の断片化やオートファジー阻害)の標的となりうる分子も含まれていた。さらに、次年度からスタートする予定であったCRISPRスクリーニングに関しても、すでに実験系の確立を進めており、速やかに次のステップに以降できる。 以上のような理由から、おおむね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度で同定したNgaの相互作用因子に関しては、結合領域のマッピングを行い、非結合変異体の作成を試みる。この変異体とノックダウン・ノックアウト解析を併用することで、Ngaによる宿主因子への結合が及ぼす宿主への影響を解析する。また、Ngaによる宿主因子の修飾の可能性についても検証を行う予定である。 また、ゲノムワイドなCRISPRスクリーニングを用いたNgaによる宿主制御機構の解析については、実験系が確立でき次第、スクリーニングを実施する。具体的には、ノックアウトライブラリーにNga-mut1を発現させ、ゴルジ体のシグナルにより非断片化細胞をソーティングし、解析する予定である。
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